映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

有頂天家族 二代目の帰朝

ツチノコ採りに励む狸の下鴨矢三郎は、
赤玉先生の息子が帰ってきたり
金曜倶楽部の周りをウロチョロしたり、
今日もにぎやかな京都の街を駆けまわる…、
有頂天家族」の続編。

531ページって長…ッ!!
やはり楽しかったです。

【ネタバレ・考察】

全作の「有頂天家族」でも、そうかな?
と思ってたけど、
金曜倶楽部の頭領・寿老人は、
夜は短し歩けよ乙女」に出てくる李白さんと
同一人物で間違いないっぽいな。
今作ではついに、李白氏(寿老人)の
三階建て電車が出てきた…。
夜は短し歩けよ乙女」では、
その三階建て電車のなかで、
李白氏(寿老人)と黒髪の乙女が
電気ブランを飲みあうという対決が行われ、
その後その電車は夜の先斗町を走るという
幻想的な世界を魅せてくれた…!!

今回の三階建て電車は、
前作「有頂天家族」の五山の送り火
下鴨一家が使った茶釜エンジンも使用され、
空飛ぶ三階建て電車になっている。
そして李白氏(寿老人)…、大還暦…、
つまり120歳手前だったんだな…。
この人こそ天狗ではないのか…!?

次に金曜倶楽部のメンバー。

元布袋→京都大学の淀川教授。
大黒屋→先斗町京料理屋『千歳屋』の主人
毘沙門→岡崎のホテル『焼雲閣』の社長
恵比寿→某銀行の偉い人

大黒屋である『千歳屋』の主人は、
夜は短し歩けよ乙女」では、
『閨房調査団』というエロ組織の代表でもあり、
自分の店『千歳屋』を
春画の臨時競売の場にしていた。
年齢は30歳くらいらしい。
その後、万引きの疑いをかけられてる
主人公の男子大学生をすくい、
地獄の鍋パーティーにいざなう…。
この地獄の鍋パーティーの主催者は
李白氏(寿老人)。
李白氏(寿老人)が千歳屋を誘ったのか
わからないが、こんなとこで金曜倶楽部での
人間関係があったんだな、とうれしくなった。
ちなみに『千歳屋』のお店は、「有頂天家族」で、
次兄が化ける叡山電車に木っ端みじんにされる。

夜は短し歩けよ乙女」や「四畳半神話大系」で
登場する自称天狗の樋口師匠。
人間界では怪人のような、
得体のしれない強そうなキャラクターとして
登場するけど、「有頂天家族」シリーズを読むと、
そんなにすごいキャラクターでもない気がする…。
森見作品ですごさのカーストを作ると、
李白氏(寿老人)がトップ?
その次に弁天や二代目。
その三人と対等に話を持っていける
狸の矢三郎が次にいて、
元すごい天狗赤玉先生はその次くらい?

樋口師匠は天狗といっても
李白氏(寿老人)の鍋パーティー
コテンパンにやられてたし、
「四畳半王国見聞録」では、
得体のしれない阿呆神を崇拝してたからな…。
天狗界ではどういう位置の人なんやろうな…。

そういえば、「有頂天家族 二代目の帰朝」でも、

「元来、天狗というのは扱いにくいものである。
 そもそも、その扱いにくさに辟易した
 人間たちによって人世の外へ
 押し出されたものが天狗であり、
 彼ら自身も自分の扱いにくさに
 辟易しているのである。」

と説明されている。
ということは、天狗という生き物は弁天も
二代目もそうだけど、元は人間、
ということなのか…?

「新釈 走れメロス」の『山月記』に登場する
斎藤はまさにそうだったな。
大好きな文に没頭して世間から孤立し、
自分自身文と向き合えなくなり、
宵山の夜飛び出したら急に体が浮きあがり
そこから天狗になった、と。
だから樋口師匠ももとは人間だったのかな。
でも、弁天や二代目や斎藤みたいに、
天狗であることの深刻な悩みは
もってなさそう…。
人間界でのほほんと生きてるからかな。
天狗カーストでは低そうだけど、
そういうところがやっぱり魅力的だな、
樋口師匠。
赤玉先生はもともと
天狗の血が流れてるのかな。
そこらへんはよくわからない。