映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

20の短編小説

朝井リョウ阿部和重伊坂幸太郎
井上荒野江國香織円城塔、恩田睦、
川上弘美木皿泉桐野夏生白石一文
津村記久子羽田圭介原田マハ
樋口毅宏藤井太洋、宮内悠介、
森見登美彦山内マリコ
山本文緒(敬称略)…、
20名の作家人が「20」をキーワードに
短編を書き下ろす。

【ネタバレ】

木皿泉さんと森見登美彦さんにつられて購入。
ほかにも気になる作家や
読んだことある作家がいて、
楽しく読んでいたけども…、
2話目の、「Across The Border」…。
グロい描写から始まり
(この時点でグロ描写があるということが
表記されてない編集部にイラつく)、
これといった主人公がなく
出来事だけ淡々とすすみ、最後…、
これで終わり?というようなもの…。
この物語の主人公はしいて言うなら
蛇のリングだったのか…?
ある意味、頭から離れないくらい
インパクトが強かったけども…、
好みかもしれないが、
物語に大きな変化がなくとも、
一人の人物にスポットを当ててその人が
何考えてるかどう行動するかとか、
そういうのが読みたかった…。
この話はいったい何だったんだろう?
と思った。
リングがお母さんのもとに返るわけでなし。
見せ場というか、
読んでる側の気づきというか、
どこでどう楽しめばいいか
わからない話だった…。

そして森見登美彦さんの小説、
「廿世紀ホテル」…。
これは、「有頂天家族 二代目の帰朝」
にも登場した場所である。
大正時代に建てられた四条烏丸にある、
西洋ホテル、『廿世紀ホテル』。
有頂天家族 二代目の帰朝」では、
天狗の赤玉先生と息子・二代目が
ホテルの令嬢をめぐってバトルした。
負けた二代目はその後欧州へ旅立ち、
百年後の現代、
バトル以来初めて京都に戻ってきた、
というもの。
今回の短編の主人公は、
大正時代の清水平太郎という
京都の第三高等学校の学生。
夏季休暇を利用し、
『廿世紀ホテル』に出現する
怪奇な現象を暴く、という話。
ネタバレだが…、怪奇な正体の親玉は、
ちょび髭をはやした英国紳士…。
いや、二代目やん。
ちょび髭紳士は自分のことを、
『妖怪の親玉』といっているが、
天狗で間違いないと思う…。
短編にもしっかり森見作品に
つながりがあってうれしいな…!!
麗しい令嬢もしっかり出ている。
「二代目の帰朝」では、弁天に似ている、
とあったが、令嬢、髪短かったねんな。
今回の短編では、
主人公も令嬢に好意を抱いているが、
この時期二代目も令嬢を好きだったのかな。
そういうことを考えたながら読むとやはり
森見作品は、奥が深いなと思った。

木皿泉さんの、
「20光年先の神様」も素敵だった。
願い事が20光年向こうにいる神様に
20年後に届いて、
神様のとこからからこちらへ
20年かけてかなえてくれる、
という考え方がなんかロマンチック。
死をテーマにした重たい話だったけど、
温かく読めた。

あと伊坂幸太郎さんの、「if」。
一番上手にまとまってると思った。
こういうのが短編小説か!!みたいな。
テーマの20も、読み進めて、
「あーそういうこと!!」みたいな。
作者のトリックに気づかされるというか。

津村記久子さんの、
ペチュニアフォールを知る二十の名所」も、
不気味で面白かった!!
あれは結局語りて?のガイドは、
すべて知ってるけどとぼけて語っている、
ってことなんかな。
最後の文を見ると。
そう思うと余計怖いな。

なんかほんまに面白い小説って、
「どういうことなん?どういうことなん?」
って夢中になって読み進めてしまう。
逆に、つまんない小説はすぐ眠たくなる。
かたい単語が並んでるともう無理。
その作家さん自身、
はなから人物にスポットを当てて
小説を書く気ないねんな、みたいな。
いや、別に人物にスポットを当てなくても
面白い小説はいっぱいあったけど、
でも、奇をてらいすぎて
意味不明なんもいくつもあって、
結局最後まで読んだけど
意味わからんかったりすると、
今まで頑張って読んだ時間返せ、
ってなる…。
私の読解力がなさすぎるのも
あるかもしれんけど…。

…そんなわけで、
好きな作家目当てで買った短編集。
たまにはこういうのもいいかな、と思った。