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火垂るの墓

清太14歳、節子4歳、父が戦争に行き、母が亡くなったため、二人は支えあいながら生きていく…。

これ…、「となりのトトロ」と同時上映されていたのか…。
重いな。
どっちが先に上映されたんだろう。
となりのトトロ」も個人的には、メイちゃんが迷子になるところはかわいそうで少し怖い映画なんだけど…。

この映画は、おばさんが意地悪、二人がかわいそう、という幼い時に見たイメージが強く、ちゃんと通して視聴したのは初めてな気がするな…。
感想、めちゃくちゃ長くなります。

【ネタバレ】

まず始まり。
主人公清太が赤っぽい姿で立っている。

『昭和20年9月21日夜、…僕は死んだ。』

清太のナレーション。
赤っぽい清太は、駅の柱に倒れ掛かっている清太を見つめている。
どうやら赤っぽい方は幽霊のよう。
この「9月21日」が、終戦である8月15日をとうに過ぎているところも、この映画のポイント。
あー切ない…。

清太が死に、駅の掃除している人が清太のポケットからドロップの缶を取り出す。
外に投げ捨て、ドロップから出てきたのは白い小さな塊。

回想(物語)に入る。
空襲警報。
母が先に逃げ、清太と節子は後から逃げる。
空襲がひどく、母と兄妹は離れ離れ。
兄妹は兵庫県西ノ宮の親せきに預けられることになる。
清太は、母が預けられているという病院で母のひどすぎる亡骸を見て西ノ宮へ帰ってくる。
清太は、感情を表に出さず。
母が亡くなったことは節子には黙っていたい、と親せきのおばさんに言う。
預けられ、一日中家や外で節子と過ごしている清太におばさんは嫌味を言い、清太は節子と二人で家を出る。
ずっと常に節子のそばにいる清太。
清太は悲しんだりくやんだりという感情はほとんど表に出さない。
二人で郷に住むようになり、ある夜、清太は節子を喜ばせようと郷の中を蛍でいっぱいにする。
きれいな蛍の光に喜ぶ節子。
翌朝節子は、土に穴を掘っていた。

「何しとんねん?」
「お墓作ってんねん。お母ちゃんもお墓に入ってんねんやろ?」
「!!」

清太は、節子の両手にざらっと乗せられた蛍の死骸たちと、自分の母が遺体の山へ放られているのを重ねて思い出す。

「うち…、おばちゃんに聞いてん。お母ちゃんもう死にはって、お墓の中にいてるねんて。」
「…………!!」

涙があふれて零れだす清太。
我慢しようにもあふれて止まらない涙。

これが、清太の初めて見せた感情だった。
ようやく涙を抑え絞り出した声で節子に、「お母ちゃんのお墓参りいこな。」といった…。
…清太は、母が死んで本当はすごくすごく悲しかったけど、悲しむ時間すら与えてくれなかった。
すぐ、節子を連れて西ノ宮のおばさんのところに行った。
その時は、母が死んで悲しい、というより、父ちゃんもいないから俺が節子を守らなきゃ!!っていう責任感が勝っていたんだと思う。
そして西ノ宮での仕打ち。
「ぶらぶらせずに学校にいったり働いたりしたらどうなの。」と。
あれはただぶらぶらしているだけじゃなくて、母が死んでまだ悲しみを消化できずにいて、心もぼーっとした状態だったんだと思う。
最初は私も、居候させてもらってるんだからもう少し謙虚になったら…?とは思ったけど、清太の大きく傷ついた心にはだれも寄り添ってくれない。
だってまだ14歳。
中学2年生か3年生。
まだまだ子ども。
一人で、やっていくには幼すぎる。

幼い節子を守らなきゃいけない責任感と、母がいない孤独な清太。
気持ちでは、申し訳ない、というところがあったから、家で隠していた梅干しやら母の売れそうな着物やらを差し出した。
が、あまり謙虚な態度が見えない清太にきつく言うおばさん。
それが苦しく出ていく清太。
清太は、このおばさんとかかわったことから、人間不振に陥るんじゃないかな。
他人や大人はやさしくない、自分で生きて節子を守らなきゃ、と。

そういうがちがちの状態で出た節子の、お母ちゃんは死んだという言葉…。
それで、「知ってたんだ…。」とも思っただろうし、清太自身「母の死」とも向き合ったんじゃないだろうか…。
母の死は、節子から聞き出したのか、おばさんから言い出したのかは不明だけど。
ていうか、おばさんの家にいるとき、おばさんが、「毎晩節子の夜泣きがひどい!!」と清太に怒っているが、それは自分が節子に、母が亡くなったことを告げたからじゃないのか…?
夜泣きでは、「おかあちゃんーー!!」ってうなされていた…。

二人で郷に住むようになって、清太は、節子と自分以外の世界は見えなくなる。
最初は母の貯金で節子にぜいたくをさせてあげているが、だんだん生活がきつくなり、食べ物を盗むようになる。
盗んだ野菜の畑の持ち主にぼこぼこにされ交番に突き出される。
…命がかかっているから食べ物に必死なのはわかるけど、そこまで子どもを殴るかね。
本当にあざだらけだった。
長時間暴力をふるってないとできないようなあざ。
西ノ宮のおばさんもそうだけど、みんながみんな、思いやりがないな、と…。
これも環境のせいなのかな。
裕福ならこの畑のおっさんも西ノ宮のおばさんも、もっと優しいのかな…?
突き出された交番のおまわりさんがいい人でちょっとほっとした。

交番から出る清太。
節子が清太を心配して様子を見に、ついてきていた。

「節子…!!」

清太は節子を見れず目をそらす。

「…兄ちゃん!!」

節子は不安そうな顔でがばっと兄に抱き着く。
肩を震わせ泣く清太…。
これが2度目の、清太の涙…。
弱っている節子を守れない悔しさと、本当に困っているのに食べ物を与えてくれず殴られる悔しさ。
あー、見ててつらい。

その後、物々交換をしていたおじさんに、西ノ宮のおばさんのもとへ帰れという。
おじさんの言うそれは、「大人の力を借りないと生きていけないぞ!!」という清太へのやさしさ。
しかし大人・人間不振に陥っている清太は、何が何でも人の手を借りないでいる。

清太が自分の信念を貫き通した結果、節子は栄養失調で死んだ。

死んだのは終戦してしばらくしてからだった。
終戦を知ったのも、節子のために、銀行に最後のお金をおろしに行った時、ほかの客が話しているのを聞いてのことだった。
14歳清太の世界は二人でしかなかったから、情報すら何も入ってこなかった。

節子の火葬も、清太自ら山でした。
節子の遺体を入れる箱を買った時、「○○に行ったら焼いてくれる」というおじさんの情報をガン無視で。
他人の力をかりたくない、というのもあるやろうけど、これに関しては、母の遺体が、ごみみたいに扱われるのを見ているから、節子をそうさせたくないというのもあったんだろう。

火葬が終わった後も涙を流さない清太。

『翌朝僕は、墓石のかけらのような節子の骨を、ドロップの缶に収めて山を下り、そのまま郷へ戻らなかった。』

節子が死んだのが、推測8月下旬かな。
このモノローグの次の場面。
序盤や中盤にちょくちょく出てきた、幽霊の赤っぽい清太と節子。
二人で和やかに、どこかの丘の上の木のベンチに座っている。
節子が清太の膝で眠り、二人の周りを舞っている蛍を神妙な顔で見ている清太。
清太が見ていたのは蛍ではなく、二人がいる丘の下にある現代の、高いビルが立ち並ぶ夜景。
蛍やビルの明かりとは対照的に、清太と節子はくらい赤っぽい色。

で、エンドロールに入ります。
こわ…、なんか…。
まぁ厳密にいうと、節子を焼いてからの清太の末は、この映画の序盤になるわけです。

9月21日に清太は亡くなって、清太のポケットからはドロップが出てくる。
ドロップの中に入っていたよくわからなかった「白い小さな塊」は、節子の骨だった、と。

節子が亡くなったのは推定8月下旬で、清太が亡くなったのは9月21日。
節子が亡くなった時、母のお金をおろしたばっかりだったし戦争も終わっているので、生きていくには十分大丈夫なはず。
しかし駅らしきところで死んだのは(見るに餓死)、もう生きる希望を失ったからじゃないかなと思う。
母が死に、父も死んだであろうと知り、節子も亡くなった。
頼れる親せきもなく、14歳清太は本当に一人ぼっち。
お金があって爆撃におびえることはないけど、希望も未来もない。
だから生きる気力がなくなって、抜け殻のまま、9月21日に亡くなったんじゃないだろうか。
悲しいな…。

なんか、「火垂るの墓」って昔は、もっと、怖い映画、というイメージだったけど、怖いというより、めちゃくちゃ考えさせられた映画。
本当は見てて、清太もう少しおばさんの家で協調性を持っていたら…、とか、早く残りのお金もおろしとけば…、とか、突っ込みたいところはいくつかあった。
だけど、それは、清太が、選択しなかったこと。
14歳清太が選んだ道。
大人じゃない子がいろんなもの背負って生きていこうとしていたから余計いろいろ考えた。

思うんだけど、現代はよく自殺者が出て自殺者やらその志願者やらが叩かれたりしているけど、それも環境のせいなのでは?と思う。
戦争という環境で、強く生きようとしている人がいる一方で、ネットやパワハラで閉塞した現代、かつお金も希望もない未来に死にたいって思うのと…、紙一重というか。
結局はその個人個人が良い悪いというより、すべて環境じゃないだろうか。
今自殺志願者も戦争時代に生まれれば生きたいと思うかもしれないし、当時立派な軍人も現代で給料の少ない底辺会社に勤めていたら死にたいって思うかもしれない。
わからんよな。
昭和と平成が終わって…、もうちょっとみんな心と環境に余裕のある生活ができたらいいのに。

あと、清太と節子が乗ってるの、阪急電車なんですね。
阪急電車のあずき色、なんかちょっと怖くなるなぁ…。