映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

悪人

主演:妻夫木聡

祖父母の面倒を見ながら
長崎で土木の仕事をしている27歳の裕一、
出会い系で知り合った女性を殺してしまい…!!

【ネタバレ】

「悪人」というタイトルからして、
血みどろの大量殺人かと思っていた。
しかし、愛を教えてくれる映画だった…。
もちろんきれいな愛ではないけども。

死というか殺人の物語って
必ずといっていいほど、
性の描写が出るのはなんでなんだろ。
性描写が出ると余計ドロドロ感が増すからか?
出会い系サイトで知り合って
初めて会う裕一にホテルに誘われ、
戸惑いながらもそれに応じる光代…。
なんで応じるの!?と疑問に思ったけど、
光代の精神もごちゃごちゃ
不安定だったんだろうな。
スーツのお店で働く光代も、
小学校から同じ町で暮らしていて、
生きがいのない人生を送っていたんだと思う。

光代をホテルに誘うときの
裕一の目がめちゃくちゃ怖い。
うつろで。
数年前に私はバイトに歩いて行ってる途中、
「s〇xしてください。」とつぶやく
小学生くらいの男の子に
つけられたことがあった。
小学生とはいえ気持ち悪くて
車道挟んで反対側に行ったけど、
自転車でゆらゆらとそばに来た。
そして何度もつぶやかれた。
当時は、不気味だったけど、この映画見て、
今ならその子がどういう心境だったのか
すごく興味があるな。
人一人殺していて私に話を
聞いてもらいたかったんだろうか。
もう小学生の男の子が
殺人犯したとなると「白夜行」だな。
連続殺人の始まりだ…!!
そう思うとかかわらなくてよかったか。
ちなみにその時のその子と妻夫木君、
同じ目をしていた!!
だから数年前のこと思い出した…!!

妻夫木聡といえば一流スターだけど、
この映画では人込みにいても
オーラも全然なくて気味悪い感じがする。
一流スターはオーラさえ自在に操れるのか…。

満島ひかりさんも演技がうまくて
イラっと来たなー。
冒頭の満島ひかりさん含め、
若い女子たちの会話のラリーというか
雰囲気が自然で好き。

人を殺すのは確かに良くない。
ただ、満島ひかりさん演じる佳乃の態度を
見てると、仕方ないのかなとも思ってしまう…。
不運も重なって。

正直、佳乃の両親が涙するほど、
佳乃は立派な人間じゃないぞ、といいたい…。
けど、佳乃にもたぶん
いい一面もあったんだろうな。
ちゃんと保険会社で働いているみたいだし、
お父さんと仲良くやってるし。
人間一面性じゃないよな。
と、殺人を犯した裕一を見て思う。

終盤、佳乃のお父さんは、
佳乃を山の中で置き去りにした男に
つかみかかるが、蹴られ逃げられる。
その男が飲んでいるお店をのぞくお父さん。
となりに、蹴られたときお父さんを
助けようとしてくれた男の友人がいた。

「あんた、大切な人はおるね?
 そんな人の…、幸せな様子を思うだけで、
 気分まで、うれしくなってくるような人は。
 今の世の中、
 大切な人のおらん人間が多すぎる。」

お父さんの言う通り、
愛がないからこういう事件が起きたんだろうな。

ラストの裕一の行動は、
光代に対するやさしさと保護のためだと思う…。
あのまま裕一が逮捕されたら、光代も、
あの性格上裕一をかばうため共犯になる。
それが嫌で、自分が逮捕される直前、
本気で光代の首を絞めたんじゃないかな。
本気じゃないと自分の考えが光代にばれ、
また情を残してしまうから、本気で…。
裕一は、光代が自分(裕一)に思い残すことなく
自分の人生を生きてほしい、
と思ったんじゃないだろうか。

裕一が逮捕されて、光代は、
「世間的には悪人なんですよね。」といっている。
なので、光代は、裕一の首を絞めた行為を
私と同じ解釈で受け取ったんじゃないかな。
結局裕一の行動がそうだとしたら、
光代にばれてしまっているけど。

裕一、最初の時は全部金髪だったのに、
逃走が長くなるにつれプリンになってるの、
細かい。

エンドロールで流れた、
映画祭での授賞式の時の妻夫木さんが
さわやかイケメンでギャップすぎて笑った。

なんだか見終わって、すごいくらい映画だけど、
身の回りの人たちに感謝したくなった。