映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

ジョバンニの島

色丹島に住む10歳の純平と7歳の寛太、
戦争が終わった1945年の9月1日、
ソ連軍が色丹島に上陸してきて…。

とても幻想的で悲しいアニメ映画だった。
私は歴史に本当に疎いので、見てよかった。

【ネタバレ】

戦時中は、色丹島は結構平和だったんだな。
沖縄のような、きれいな海と空で、
純平たちも楽しそうに遊んでいた。

そして1945年9月1日。
ソ連軍上陸。

父親の弟のヒデオが戦地から帰ってくる。
ヒデオは純平に、列車のおもちゃをあげる。
おもちゃは、色丹島の住民がソ連軍が
怖くなって逃げ出した家で盗んできたもの。

やがて純平たち家族が住んでいた家に
ソ連将校一家が住むことになり、
純平たちは離れ(馬小屋?)で住むことに。

ヒデオはまた純平たちに
列車のおもちゃをもってきてくれる。
ヒデオは、
逃げ出した家から売れそうなものを盗み、
本土で売りさばいている。
それを生活費にしている。
ヒデオは、ソ連にばれず島へ戻ってこれるよう、
純平に、「ソ連の船がいなければ
ここで焚火を燃やせ。」と指示する。
賢くて、図太くて、軽い男だ。
この映画でヒデオが一番かっこよかった。

学校も、オルガンがあって広い教室はソ連が、
小さい教室は島民達が使うようになった。
子どもたちもストレスで、
隣から聞こえてくるロシアの音楽に対抗して、
「夕焼け小焼け」を大熱唱していた。

またヒデオが来る。
くれた列車のおもちゃを、線路をひいて、
電気で動かせるようにしてくれた。
その光は隣(自分たちが住んでいた家)の
ソ連将校の娘、ターニャまで届く。
ターニャは隙間を少し開け、線路をつなげる。
線路はたぶん、
もともと純平たちが持っていたものかな。
純平たちも線路に気づき、
部屋を暗くして走らせる。
列車の先頭に電気がついているので、
電気がそこらに置いたものを照らしていく。
食器、酒瓶、かご。
電車がアミのかごの下を通った時は、
天井がプラネタリウムみたいになって
とても幻想的だった。
ターニャのいる部屋へ入った列車、
戻ってきたら、リボンがついていた。

ちなみに、この物語は、宮沢賢治の、
銀河鉄道の夜」も使っている。
純平たちの父がこの物語のファンで、
純平は=ジョバンニ、寛太=カンパネルラ、
らしい。
だから、とてもきれいなシーンが
いくつも入っているアニメ映画。

学校、音楽の授業。
一緒の建物にいたらソ連の音楽も
覚えてくるのか、ある日、
弟寛太は隣の音楽に合わせて歌いだした。
すると、周りの生徒たちも合わせて
次々とうたいだす…。
隣の教室では、聞こえてくる
日本の子どもたちの声。
先生はオルガンを止めず、
ソ連の子たちも歌うことをやめない。
その瞬間、ソ連の先生のオルガンに合わせて、
ソ連と日本の子どもが一つになっていた。
ソ連の歌が終わり、次に聞こえてきた
オルガンは、「夕焼け小焼け」。
オルガンに合わせ、ソ連の子たちは歌い、
日本の子どもたちもそれに合わせる…。
…ここちょっと泣きそうになった。

これをきっかけか、
日本とソ連の子どもたちは仲良くなる。
純平と寛太が仲良くなったのは、
列車遊びの時に少し心を通わせたターニャ。
次第に、
純平とターニャは二人きりで遊んだりする。
純平にとったら幸せな日。

しかし、父が、
ソ連軍が備蓄している食料に手を出した。
もともと島民の物なのだし
このままでは飢えてしまう、と。
そしてソ連軍につかまり、連行されてしまう。

1947年9月25日、朝方。
ソ連軍によって、色丹島から、
強制連行されていく島民たち。
正直、ソ連軍が来てからのこの2年間、
日本は何をしていたんだと思った。
戦後2年でいろいろあったんだろうが、
それでも、もっと何かできなかったのかな。
純平も、ターニャとはそれきりになる。

色丹からついた先は樺太
ヒデオが、純平たちに、「父は生きている、
この山の向こうに収容されている」という。
二人はうれしくなり、ヒデオと先生
(父に思いを寄せている二人の
母のような存在の女性)に黙って
雪の夜、こっそり父に会いに行く。
ちなみに母は前に亡くなっている。

列車で見つからないよう終電まで行き、
山を登っていく。
が、途中、追いかけてきた
ヒデオと先生に見つかる。
二人がごねた結果、四人で会いに行くことに。

日が明け、要塞?があり、休憩することに。
が、ソ連軍が自分らが乗ってた車を見つける。
ヒデオ自ら、おとりになることにした。
ここのヒデオがかっこよかったけ
どうまく言えない。
いろんな手を使ってうまく生き抜いてきたヒデオ、
生きることへの執着が強かったように見えた。
そんなヒデオが愛するさわ子(先生)のためか、
男としてのプライドか、
死を覚悟して向かったから、
とてもかっこよかった。

「拙者、不死身の旅烏でござる。
 では、皆々様、お達者で。」

3人は父の収容所を目指す。

3人、夜中に、収容所を見つけ、
出てくる父を発見。
間接的に連絡は取れており、
待ち合わせていた。
収容所を囲っている鉄線へ走って向かう。

純平、寛太「「お父さん…!!」」
父「…無茶なことをするな。
 捕まったらどうするんだ…!!
 ここは危険だ、すぐ帰りなさい。…帰れ。」
純「……。」
寛「……。」
父「今すぐ帰れ…!!」
純「……。」
寛「……。」
先「……。」

先生が静かに二人を促し、
元来た方向へ帰っていく。
帰っていく二人の姿を見てこらえきれなくなる父。

父「純平…ッ!!」

振り向く三人。
駆け戻っていく二人。

父「寛太…ッ!!」
純平、寛太、「お父さん…ッ!!」
父「ありがとう、よく来たな…、よく来た…。」

ココもちょっと泣きそうになった…。
純平たちには、父が唯一の親。
もともと責任感の強い父だが、
さらに母がいないから、
「自分が守らなければ!!」
という思いは強いと思う。
とても愛情深い男。

そして無事、父子で話することができ、
帰っていく。
が、弟寛太の様子がおかしい。
これはそれこそ、「銀河鉄道の夜」で、
カンパネルラである寛太は、
列車の最後まで乗っていってしまった。

という映画。
まだ最後まであるけど。
なんか、よかったな。

あれから父はどうなったんだろう。
最後現代になって、先生が色丹島のお墓で
父の名前を呼んでいたから、
結局会えずじまいだったんだろうか…。
後地味に、序盤に出てきたお手伝いさん?
のみっちゃんが気になる。
いち早く逃げたようだけど、
あとから出てくると思ってたら
出てこなかったから、気になった。

素敵で悲しい映画でした。
仲間由紀恵さんの声優、
すきだったからうれしかった!!
(以前地上波のジュラシックワールド見た時)

ネットで、現在の北方領土を調べたら、
今はロシアの人が普通に使っている、と。
日本の文化はなく、
特に田舎でも都会でもない町で、
火山や動物など自然が豊かな島、と。