映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

すいか 9・最終話

基子が母と仲直りして、もう実家には戻らないことを告げる9話。
きずなが通り魔にやられたり、教授がハピネス三茶を出ていったり、基子は、3億円横領し逃亡中の馬場との再会を果たす最終話。

ヤッパリ初期のほうが好きかなー。
初期は基子の平凡な人生の悩みにスポットあてられていて見やすかった。
100円玉貯金をどうしようかとか、ずる休みをしてしまったけどどうしようかとか。
終盤は、綱吉がいなくなってもきずながさみしがってる様子もほとんどなかったり、さーって話が進んでる。
でも、結局好きなんだけどねこのドラマは。
また、元気になれるセリフがあった。

自殺未遂した大学生が、教授の元を訪れたが、停電になり、そしてまた電気がついた。

教「一寸先は闇よ。人生は、さっきみたいに何にも見えないの。あたしだってあなただって、先のことは全くわからないんだから。」
大「……。」
教「生きていくのが怖いのは、誰だっておんなじです。」

以前ネットで職業別年収を調べてたところ、大学教授って年収1000万円越えるらしい。
何十年もあのボロアパートに住んでいたら、すごいお金たまってるだろうな。
でも教授はキャラ的に、お金なくても強く生きていけそう。

ほかには、子離れできない母親に、自分の人生を歩みたい基子が言うセリフ。

基「あのね、お母さん。あたし決めたの。もう帰らないって。」
母「そんな…。人が病気で弱ってるときに…。なんでそんなこと言うのよ。」
基「だから、もう一緒には暮らせないってことわかってよ。」
母「なーんで暮らせないのよ結婚したわけでもないのに。」
基「じゃあ結婚したと思えばいいじゃない。」
母「思えないわよー。してないのにー。」
基「病院の人と仲良くなったってさー今日みたいに別れないといけないでしょー?だからそれとおんなじよ。いくら母娘でも、ずーっと一緒なんて無理なんだから。」
母「……。」
基「あたし、自分で何かを決めたのって、生まれて初めてなのよ。うちを出て、自分の力でなんとか暮らしていこうって。それで不幸になっても、かまわない、って。」
母「……。」
基「あたしー、自分の納得する人生を送りたい…。」

納得する人生なんて難しいけどな。
頭でわかってても、心で動いてしまうと結局納得のできない選択をしてしまう。
基子の表情からして、まだ、具体的な、「納得のいく人生」をつかめていないんだと思う。
「とりあえず母から独立したい。」が一番強くて、そこから探り探りで生きていくんだろうな。
基子は34歳だけど、1話から基子の気持ちはすごくわかる。
 
最終話。
3億円横領して逃亡中の馬場ちゃんから、以前社内BBQをした広い公園に呼び出される基子。

馬「早川(基子)のさー、下宿行った時さ、梅干しの種見て泣けた。」
基「梅干しの種?」
馬「…朝ごはん食べた後の食器にさ、梅干しの種がこう、それぞれ残ってて、なんかそれが―、愛らしいっつーか…、つつましいっていうか。なんか…、生活するってこういうことなんだなって思って泣けてきた。」
基「そんな大げさだよ。」
馬「全然大げさじゃないよ。掃除機の音もー、すごい久しぶりだった。お茶碗とお皿が触れ合う音とか、庭に水まいたり、台所に行って何かこしらえて、それをみんなで食べたりさ。なんかー、そういうのみんな、あたしにはないんだよね。」
基「……。」
馬「そんな大事なもの、たったの3憶円で手放しちゃったんだよね。」
基「……。」

基子は今までハピネス三茶で過ごしてきたことを回想する。
馬場ちゃんは、先ほどまで話していた二人で逃げるための飛行機チケットと、基子のおつかいメモを基子に突きつける。

馬「どっちだ。」
基「……!!」
馬「早川の人生なんだから、自分で選びな。」
基「……。」
馬「ほら。」
基「……。」

基子は馬場ちゃんの手から、おつかいメモを取る。

基「これ買って帰んないと、明日の朝みんなコーヒー飲めないんだよね。」
馬「…目玉焼きも作れないしね。」
基「馬場ちゃん…。」
馬「ふっ。だから冗談だって言ってるじゃん。あたしは犯罪者だよ?大事な友達巻き込んだら、それこそ一生後悔するよ。」
基「……。」

馬場ちゃん切ない…。
当たり前の生活が、幸せなことなんだって気づける馬場ちゃんのセリフ。
梅干しの種見て、愛らしいとか木皿泉さんでないと書けないセリフなんじゃないかな。
本当に好き。

まぁなんというか、前半に比べ後半が…、とも思うけど、それでもやっぱり「すいか」が好き。
最近はネットで、人の価値観を否定するさまを見ているから余計、「すいか」の中での人間関係があったかく感じる。
余計な人間関係を作ってないからかもな。
ただ自分の周りにいる人たちとの関係と、自分自身に悩み、生きている。
だからこそ馬場ちゃんの言う、「愛らしい生活」が生まれるんだろうな。

本ッ当に素敵なドラマでした。

できれば脚本にのっていた10年後の「すいか」もドラマ化してほしいけど無理だろうな。
ドラマから20年たってるし。