映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

たゆたえども沈まず

明治時代、フランスにすごく憧れた加納重吉はフランスにわたり、林忠正と共に日本美術を売り込む。
ある日林の画商で浮世絵を真剣に見ていた汚い身なりの男が、売れない画家フィンセント・ファン・ゴッホだった…!

【ネタバレ】

とてもおもしろかった!

フランスや美術について素人だががんばり屋で純粋な重吉。
感情を表に出さず画商としてやり手な林。
弟テオからの仕送りを画材ではなく酒に使い常に情緒不安定なフィンセント。
画商としてやり手だが兄のことになると必要以上に感情が揺れるテオ。

パリで、4人の関り合いで物語が進んでいく。

テオはビジネスマンとしてならやり手でいうことはない。
感情のないビジネストークで次々と高額な絵を売り付けていく。
だけど、小さいときからの憧れ兄のフィンセントには特別な思いを抱いてるため、うまくいかない。
身なりがボロボロでも酒に溺れても、兄の才能を信じ、兄を信じてる自分を信じ行動していくが、なかなか芽を出さない兄に焦り、少しずつ自分に迷いを生じるようになる。
テオが結婚したとき幸せの絶頂なのに、フィンセントには報告できなかった。
フィンセントがやんでるのに自分は幸せでいいのか、という気もちと、今はフィンセントというしんどいことを考えたくない、という気持ちで揺れていたから。
フィンセントがやんでいくにつれ、テオも引っ張られ徐々にやんでいく。

結局、フィンセントが自殺した数ヵ月後に、テオも病気で亡くなる…。

テオはビジネストークしてるときは感情のない冷たい印象だったけど、本当は兄思いのとても優しい人だった…。
でももっと、「自分」の人生を生きてもよかったのかなと思った。