映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

サマーバケーションEP

古川日出男

人の顔を覚えられない病気の
主人公♂は、井の頭公園
ウナさん・カネコさんと
出会い神田川に沿って
海を目指す…!!

文章は読みにくいけど、
めっちゃ散歩に行きたくなる!!
夏に読んでよかった。
歩きながら仲間が増えたり
減ったりするんやけど、
こういう不思議な出会いって
いいよなー。

妙に印象に残る小説。

 
【再読・ネタバレ】
 
めっちゃ好き。
夏に読みたくなる小説!
物語は、視力はあるけど人の顔の見分けがつかず集団行動が苦手な二十歳の「僕」がホームから外出許可もらったので、井の頭公園に一人で遊びにきていたところから始まる。
ホームということは、おそらく施設。
普通の学校もいってたんだろうなと思わせる部分はあったけど病気?だから学校にいけなくなっておそらくそのあとは養護学校?施設?
とにかくなんか親もいないのかな。
登場人物について詳しくふれてないからわからんけど。
 
そんな「僕」は井の頭公園でウナさんとカネコさんと出会い、川の源流から海(東京湾)を目指すことになる。
以下、登場人物の動き。
ラストまでネタバレ。
 
◼️お昼11時。
・「僕」、ウナさん、カネコさん、井の頭公園を出発
・へその人、イギリス人さん、と出会い一緒に歩く
・小学生3人、と出会い一緒に歩く
・おじさん、と出会い一緒に歩く
・おじさん、が離脱
ミスドでお茶休憩
・おじさん、広東さんと北京さんをつれ合流、一緒に歩く
・小学生3人、離脱
◼️夕方5時
・遊歩道で夕飯
・自転車8人組、と出会い自転車にのせてもらって移動
◼️夜8時
・自転車8人組、とわかれる
・ドームシティで温泉、睡眠
◼️朝5時半
・イギリス人さん、へその人、離脱
・起床、温泉、朝食
◼️朝7時、出発
・おじさん、広東さん、北京さん、離脱
・「僕」、ウナさん、カネコさん、東京湾に到着
 
移動というのは本来物語の中では省かれがち。
でもこの物語は「僕」目線で温度、音、食べたもの、などめちゃくちゃ丁寧に移動を描写しているから面白い。
季節感や空気感などがすごく伝わってくる。
私も一緒に歩いてるみたい。
実際人物が歩いている場所ごとに私も写真を検索して物語をすすめた。
だんだん川幅が広くなっていくことに感動。
実際歩いてる人たちはもっと感動するんだろうな。
登場人物が離脱するときがとても切ない。
いい人だけど変な人ばっかりやったしな。
でもみんなベタベタとした人間関係じゃないから、さらっとわかれてる。
そこがまたこの世界観とマッチしていた。
 
この物語のラストの文章、そこだけちょっと怖かった。
 
(「じゃん、けん」と3人で言いました。声を揃えて。そして、次の瞬間の声が、僕の記憶の内側で止まります。一時停止して、ずっと、ずっと。ずっと、きっと。消えないで、ここにいます。)
 
普通記憶って残るものじゃないの?
残ったままその人の人生は進むんじゃないの?
なんで一時停止してここにいるの?
この書き方まるで「僕」の人生がここで終わってるみたい…。
深読みしすぎ?
どんなに時は過ぎてもいつでもこの場所に戻ってこれるよって意味?
「僕」には幸せになってほしいから後者ということにしとこう。