映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

劇場版 進撃の巨人 Season2 ~覚醒の咆哮~

巨人を恐れ3重の壁を作って「自分達以外の人類は巨人に食いつくされた」と思い107年間生きてきた人類。

そして5年前、壁の外から「超大型巨人」と「鎧の巨人」がやってきて1番外側の壁は壊された。

壊された穴から次々と巨人が入ってき、たくさんの人が食われ、たくさんの人が住む場所を失った。

…単行本9~12巻をまとめた話。

 

【ネタバレ】

 

ココの話は、それぞれのキャラクターたちが持つ事情が明かされていなかったため、はじめてアニメでみたときは主人公のエレン同様「??」となった。

でも、キャラクターが背負っている事情を知ってみてみると本当に切なくて、つらい。

 

主に、ユミル、ベルトルト、ライナーというわき役3人の話になる。

3人ともエレン達と同じ、104期生の調査兵団の仲間。

しかしユミルという口と目つきの悪い女子は、実は壁の外で生まれた人間…、しかも乞食だった。

ユミルは海の向こうにあるマーレ国の人間に、パラディ島(3重の壁がある島)で巨人になる薬を注射され巨人になった。

もちろんこの時点でエレンら壁の中の人間は誰も海だの島だのの存在すらわかっていない。

そして巨人になったユミルは人間の心を失いながら壁の外を放浪していた。

その間60年…。

逆によく人間(壁の外を調査する調査兵団)に殺されずにいれたものだ…。

そんなある日巨人ユミルがたまたま食べたのが、マーレ国から壁の中の“進撃の巨人”“始祖の巨人”を奪還するよう命じられたマルセルという男の子。

マルセルは、同じ命令を受けた同年代の仲間ライナー(男)、ベルトルト(男)、アニ(女)と一緒にいた。

マルセルは、人間の心を保ちながら巨人の能力を使える‟9つの巨人”の中の1つ‟顎の巨人”を継承(食べて)いた。

ユミルがマルセルを食べたことによって、‟顎の巨人”の能力が移り、人間に戻ることができた。

ちなみにこの時ベルトルト達はすぐに逃げたためユミルが人間になった姿を見ていない。

 

マルセルは食べられたので死に、ベルトルトは「超大型巨人」に、ライナーは「鎧の巨人」になり壁に穴をあけ、街を破壊し、アニとともに壁の中に入った。

その時にちゃっかりユミルも入っている。

 

こうして、ベルトルト、ライナー、アニ、ユミルは壁の中の住人になり、104期生訓練生として過ごし卒業した。

5年間壁の中で過ごしたことになる。

卒業し、ベルトルト、ライナー、ユミルは調査兵団に。

アニは憲兵団に入った。

しかしアニはすでに「女型の巨人」としての正体がばれ、幽閉されている。

が、ベルトルトやライナーが仲間であることはばれていない。

 

そんな中、ユミル、ベルトルト、ライナー、クリスタ、コニーの104期生は武器も立体起動装置もなく、とある塔のてっぺんで人間の心がない巨人達に囲まれ四面楚歌状態になる。

もちろんベルトルトとライナーとユミルが巨人化して戦えば早い話。

だけど、ベルトルトとライナーはマーレ国の任務のため、ユミルはせっかく手に入れた第二の人生を手放したくないため、何も動けずにいる。

 

が、ユミルは迷っていた。

壁の中で5年間一緒に過ごしてきたクリスタという小柄な女の子が特別な存在になっていたため。

クリスタはある事情により偽名を使ってひっそりと生きるよう父親から命じられていて、ユミルはクリスタが偽名であることを知っている。

またクリスタが死にたいからという理由で、巨人と前線で戦う調査兵団に入っていることも知っている。

 

…ユミルはマーレ国時代、物ごいをする乞食の子どもだったが、ある男に拾われ、ユミルという名前を与えられた。

男のプロデュース力?により、人々からかってに「ユミルさま」と崇められ喜ばれたため、ユミルは純粋に人のために生きてきた。

しかしユミル自身になんの力もなかったためか、だんだん「悪魔」と呼ばれ、最終的にパラディ島で巨人にされる刑となった。

だがクリスタは、ユミルの過去どころか巨人になれることすらも知らない。

 

ユミルは以前、偽名で生きていてかつ自殺願望のあるクリスタに声をあらげ感情を吐き出していたことがある。

 

「偶然にも第二の人生を得ることができてな 私は生まれ変わった!だがその際にもとの名前を偽ったりはしてない!ユミルとして生まれたことを否定したら負けなんだよ!私はこの名前のままでいかした人生を送ってやる!それが私の人生の復讐なんだよ!」

 

ユミルはもうクリスタを守るためならなんだってできるようになっていた。

そして、塔の上で覚悟を決めたような表情になり、クリスタに言う。

 

「クリスタ… お前の生き方に口出しする権利は私にない だからこれはただの… 私の願望なんだがな お前… 胸張って生きろよ」

 

ユミルは自ら塔から落ち、心のなかで呟く。

 

(クリスタ… 私もだ 自分なんて生まれてこなければよかったと思ってた ただ存在するだけで世界に憎まれたんだ 私は… 大勢の人の幸せのために 死んであげた …でも その時に心から願ったことがある もし生まれ変わることができたなら… 今度は自分のためだけに生きたいと…)

 

ユミルは巨人化し、たくさんの巨人と戦うことになった。

 

その後、ほかの調査兵団に助けられ、ユミルは瀕死で塔の上の104期生たちも全員助けられる。

みんなユミルの巨人化に驚いている。

 

ベルトルトとライナーは、もう実行しよう、と、目的の‟進撃の巨人”を継承しているエレンと、マルセルを食べて‟顎の巨人”を継承したユミルを強引に連れ去り、故郷マーレ国へ帰ろうとした。

“9つの巨人”を継承した人間は回復が早いので、ユミルもなおって元気になった。

道中、ライナー達はユミルに取引を持ちかける。

俺たちにつけばユミルの命は保証できないがクリスタだけはマーレ国で守ってやれる、と。

ユミルは考える。

壁の外を知るユミルからしたら、「壁の中の世界」はとてもちっぽけで、マーレ国を含む「壁の外の世界」はとても強大だ。

巨人の知識も豊富で、今回壁の中に攻めてきた猿の巨人は今まで知らないくらい強くて近づくことすらできなかった。

このまま壁の中にいたっていつか世界から攻められ、未来はないだろう…。

クリスタにはなんとしても助かって欲しい…。

ユミルは、ライナー側につくことにした。

クリスタをさらって一緒にマーレ国に行く、と。

そしてユミルはベルトルト達と話している最中、自分が食べたのは彼らの仲間だと知る。

さらに、ベルトルト達がおかれている立場もなんとなく理解する。

 

クリスタも拉致し、ライナーは‟鎧の巨人”になってベルトルト、ユミル、拉致したエレンと逃げるが当然追ってくる調査兵団

調査兵団はたくさんの犠牲者を出しつつも、104期生たちがライナーの身体に乗るまで到達した。

ライナーの両手が、ベルトルトとエレンを守っている。

同期のジャンやコニーがライナーの手の中のベルトルトに訴えかける。

 

コニー「全部嘘だったのかよ…!?どうすりゃみんなで生き残れるか話し合ったのも おっさんになるまで生きていつかみんなで酒飲もうって話したのも… 全部… 嘘だったのか?」

 

事情を知らないエレン達からしたら許すことのできない殺人犯だけど、ベルトルトもライナーもアニも、マーレ国から命令を受けただけの末端戦士に過ぎない。

マーレ国で虐げられている自分達エルディア人が戦士に選ばれると自分と家族はいい暮らしができるから頑張って戦士になった…。

彼らは壁の中の人間は悪魔だときかされて育ってきた。

任務当時まだみんな10歳とかだったし世界を俯瞰して何が正しいとか見れる知識も経験もなかった。

だけど実際に壁の中にいたのは、入隊式の時に芋を食べるバカや、自分のことしか考えない不真面目なやつや、人のことばっかり考えてるくそ真面目なやつ…、自分達と同じただの人間だった…。

 

ベルトルト「だっ… 誰がッ!!人なんか殺したいと!!…思うんだ!!誰が好きでこんなこと!!こんなことをしたいと思うんだよ!!人から恨まれて 殺されても… 当然のことをした 取り返しのつかないことを… でも… 僕らは 罪を受け入れきれなかった… 兵士を演じてる間だけは… 少しだけ 楽だった… 嘘じゃないんだコニー!ジャン!確かにみんな騙した… けど 全てが嘘じゃない!本当に仲間だと思ってたよ!!」

 

戦士に選ばれたベルトルト達は一生懸命任務を果たそうと、壁の中のたくさんの人を殺した。

そしてそのあとエレン達仲間ができることでより罪悪感がました…。

でも自分達がやったことの重さを受けいれきれないから兵士をやっているときは自分をごまかせて気持ちがましだった、と。

ライナーに至ってはかわいそうに精神が変になり、多重人格者にまでなってしまっていた…。

ライナーも本当はずっと、頼れる兄貴分でいたかったはず…。

 

マーレ国うんぬんの事情を知らない104期生調査兵団だが、葛藤する表情になる。

エレンは調査兵団団長によってなんとか助けられる。

そしてエレンは本人もわかっていないが実はもう一つ継承していた‟始祖の巨人”の能力を無意識に発動した。

有象無象の巨人たちがライナーたちを襲うことに…!!

このエレンの能力を見たユミルは、「壁の中にも未来があるかも」と、クリスタとともに調査兵団に混ざり戻ろうとした。

が、‟鎧の巨人”のライナーがやられそうだしベルトルトも叫び声をあげてる。

ユミルは、クリスタに別れを言い、自らの意思でベルトルト達の元に戻り、応戦した。

 

命からがら巨人を追い払い、安全な壁の上にいる3人。

ユミルがこれからライナーたちとマーレ国に帰ったところで、‟顎の巨人”継承のために別の戦士に食べられることは分かっている。

ライナーたちに自分の死を止められる権力がないのも分かっている。

自分とクリスタが助かるためなら調査兵団のところへ戻っておけばよかった。

 

ライナー「ユミル… なんで俺たちのところへきた?」

ユミル「あぁ… そりゃ 私がバカだからだな 里帰りのお土産になってやってんだよ 手ぶらじゃお前ら帰ってくれねぇだろ」

 

ベルトルトもユミルに聞く。

 

ベ「ユミル… なんで… 僕を助けてくれたの?」

ユ「お前たちの境遇を知ってるのは私だけだしな… 私も同じだよ… 自分じゃどうにもならなかった」

ベ「…ありがとう ユミル… …すまない」

 

ベルトルトは涙を流しお礼を言う。

そしてユミルはライナーたちとマーレ国へ向かった…。

 

みんな切ない…。

ベルトルトらはまだ10代なのにいろいろ背負わされてる。

故郷でも期待は大きいし、人殺しにならないといけないし…。

そしてその事情を相談できないから、当然すべての罪の対象がライナーたちに向く。

つらい。

 

ユミルもつらい人生だけど、第二の人生をとても前向きにとらえててすごくかっこよく感じた。

「胸張って生きろよ」に重みを感じる。

自分も胸はって生きたんだしね。

ユミル本当に好き。