映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

昨日のカレー、明日のパン

木皿泉

7年前に旦那の一樹を亡くし、
義父と二人暮らしの28歳のテツコ…、
二人を取り巻く温かい人間関係…!!

木皿泉さんの作品なので、
生きて行く上で言葉にできない悩みが、
独特のエピソードや台詞とともに
救われるのかと思ったら、結構、
「死」と向き合う少し重い話やった…!!
だけど、素敵な台詞もあった!!

「自分には、この人間関係しかないとか、
 この場所しかないとか、
 この仕事しかないとかそう思いこんでしまったら、
 たとえ、ひどい目にあわされても、
 そこから逃げるという発想を持てない。
 呪いにかけられたようなものだな。
 逃げられないようにする呪文があるのなら、
 それを解き放つ呪文も、
 この世には同じ数だけあると思うんだけどねぇ。」

木皿さんって、
誰もが共感するけどみんな気付いていないことを、
ストレートに人物に言わせるよね。

テツコも義父も
今ののんびりした生活にけじめをつけなきゃ、
とは思っててでも居心地がいいから変われなくて…、
小さな前進やけど、
登場人物みんな悩んで生きているんやな、
ということがわかって読んでてうれしくなった。