映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

百貨店ワルツ

 

大正~昭和初期、とある地方都市にある「三紅百貨店」という架空の百貨店を舞台にしたマツオヒロミの初イラスト集。
モダンな服を身にまとった女性たち、宝飾品や化粧品など、繊細で美麗なイラストや漫画が堪能できる。

 

 

この本は一貫して、「三紅百貨店」内を1階から6階まで順番に、商品や従業員・客たちをあくまで紹介する体で、イラストや漫画、カットイラスト(小物や背景の一部分のみのイラスト)が描かれている。
イラストに添えられてる文章もとてもいい味を出しているので、冒頭からめちゃくちゃ世界観に引き込まれる。

 

「いらっしゃいませ。本日はご来店いただき誠にありがとうございます。
 私ども三紅百貨店は、お召し物、お化粧品、宝飾品、家具、文具などあらゆるお品を取り揃えております。そのほか、大食堂に屋上庭園も備え、お買い物以外にも素晴らしい時間を過ごしていただけます。
 呉服商から百貨店事業に乗り出して十数年。海外との交易で栄えたこの土地ならではの品ぞろえは、モダンでロマンチックだと評判です。また、品々の魅力だけにとどまらず、華やかで近代的な店内装飾もぜひじっくりお楽しみください。この魅力的な空間でお買い物を楽しまれた時間はきっと素敵な思い出になることでしょう。」

 

呉服商から百貨店事業に乗り出して十数年』っていう設定がもう細かい。
『交易で栄えたこの土地』ってことは海に接している地方都市なのかな?
福岡市??
といろいろ想像をめぐらすのも面白い。
1~5階は化粧品や呉服など女性たちのお目当てのものが売っている。
マジでデザインがめっちゃかわいい…。
かわいいしおしゃれ。
そして6階。

 

「大食堂は、三紅百貨店の中でも最も改装を重ねた場所です。
 ただ食事や喫茶のためだけではない、豪華で特別な時間と空間を提供すべく、その時代に合わせて改装してきました。ロココ調の時代や、英国風の時代、中華風の装飾に巨大水槽を備えたエキゾチックな内装の時代など、さまざまに変化し、そうやって改装するたびにお客様が詰めかける、この街の名物食堂でもありました。」

 

めっちゃ改装を重ねる大食堂…。
きっとここの支配人?が、「大食堂は流行とともに変化していくぞ!」という柔軟な考えのもと動いているのかな、とまたもや想像。

 

すごいわマツオヒロミさん…。
単なるイラスト集の設定じゃない…!
そして言わずもがなイラストは超きれい!!!
特に色が好き!
「三紅」というだけあって、赤色も「赤!」という原色ではなく、紅色が使われていて、とても品がある。
三紅百貨店の包装紙のガラも好き!!
3種類あったけど、すべてレトロでかわいかった。
本当にすべてが品のあるイラスト。
この中に登場する人たちも話し方が丁寧なので、読んでるだけでなんか女子力が上がる作品。
一人でゆっくり買い物に行きたくなった。