映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

すいか 1・2話

主演:小林聡美

東京にあるシェアハウス「ハピネス三茶」に住む、
50代?の大学教授、
27歳エロ漫画家きずな、大家のゆかちゃん、
と出会う主人公の34歳独身の基子。
4人を中心とした、様々な人間模様。
2003年放送のNHKドラマ。

いやもうこれは何回も観ているドラマ!!!
心が疲れた時に復活剤として
毎度使視聴している。
だけど、何気に感想書いていなかった。

人生は疲れるねー。
将来の不安とか人間関係とか。
でも、ほっと一息というか、
せかせかしていない世界に行きたいときに、
見ると本当に幸せになる。

そしてやはり、
脚本の木皿泉さんは複数の人間の思いを
交錯させるのがめちゃくちゃお上手。
序盤の小さい伏線を後に持ってきたりして。
そういうのが何度も繰り返して、
進んでいくドラマ。
だから平坦な進み方ではあるけれども、
まったく飽きなくて面白い!!

一話は、主人公の基子の同僚、馬場ちゃんが、
勤めてる銀行の3憶円を横領する、という話。
それまで二人は
平凡な会社員生活を送っていた。
中堅であるのに、その待遇の悪さに、
お弁当を食べながら、
ぐちぐち言い合ったりとかして。
馬場ちゃんが3憶を横領し逃走し、
上司は基子に、普段二人は
どんな会話をしていたか聞いていた。

「どんなことでもいいからさ、
 思い出してくれないかな。」
「…………。」
「ねぇ…?」
「…………。うちの会社の制服は…、
 女子高生みたいで嫌いだって言ってました。」
「…………。ほかには?」
「……最近入社してくる社員の質が
 悪すぎるんじゃないか。
 融資にケバい女が集まるのは、
 小川部長のもろ趣味なんじゃないか。
 仕事ができない課長に、
 女の子って言われるたびにむかつく。
 私ら34だっつの。
 何が悲しくてお昼の弁当電気もつけられない
 部屋で食べなきゃなんないのか。
 節電っていうけど、
 支店長室は電気ついてんじゃないか。会社は、
 私たちのことを粗末に扱ってんじゃないか。
 そのことがとても悔しい、14年間!!
 粗末に扱われることに慣れようとしてきたけど
 それでも、慣れなかった私が悪いのか!!
 ……ただ、まっとうに、
 人として扱ってほしいと思うのは、
 そんなに悪いことなのか。
 ……今思い出せるのはそんなところです。」

ここすごく好き。
よおいうた基子!!って感じ。
上司ってなかなか部下の気持ち
わかってくれないもんね。
いくら福利厚生ちゃんとしている会社でも、
細かいことは泣き寝入りというか。
お互い当たり前になってしまっている。
でも部下側は本当はストレスたまっている。
だけどなかなかそういうことを直接言えないから、
基子がストレートに言っている姿を見て
ざまーみろと思った。

馬場ちゃん役の小泉今日子さん、きれいな。
声もとても好き!!

『泥船』という呑み屋で、
基子と大学教授と大家のゆかちゃんが
飲んでいるシーン。
漫画家のきずなは現在の所持金83円のため
仕事をしないといけないから早く帰っている。

基「83円!!?
 あっ、でも、銀行にはあるんでしょ?」
ゆ「甘い!!あの人に限ってそれはない。」
基「えっ、
 だってどうやって暮らしてくんですか83円で!!」
ゆ「うーん、それが不思議なんですよねー。
 んーまー、うちで付けで食べてますけどー、
 そのほかはどうしてるのか…!!
 謎ですよねぇー…!!」
基「…………。」
教「…………。あなた、
 この世にそんな女がいるとは信じられない
 って思いましたね今。」
基「はい…。」
教「それは違います。いろいろいていいんです。」
基「…………。
 私みたいなもんも、…いていいんですかね。」
教「…いてよし。」

いいなぁ、温かいなぁ、教授の言葉。
このドラマで一番有名なセリフだと思う、
「いてよし。」
ちなみに脚本のほうでは、
「いてよしッ!」と強めだけど、ドラマでは、
「…いてよし。」としっとりしっかりな言い方。
教授は厳しいことを言うけど、
個人個人を大切に思っているというか。
自分が学生の時からずっと独身で
「ハピネス三茶」にいるという
変わった生き方をしているからかな。
冷たい人間ではない。
むしろ、
安心するような温かい言葉をよくかけてくれる。

2話。
基子が実家を出て
「ハピネス三茶」に暮らすことになる回。

メディアの人間から基子に、
「馬場まりこの写真を1枚5万円で売ってほしい。」
と交渉をされる。
名刺をもらい家に帰ると、母が1万円で、
基子と馬場ちゃんの写真を売っていた。

ハピネス三茶で基子は、
きずなに話を聞いてもらっている…。

「……母親の何に腹が立ったかっていうと、
 1万で売ったからで、
 ほんとは5万で売れたものをなんで勝手に
 1万で売るかって、ッ4万も損したじゃんって…、
 頭ン中んもー4万の損4万の損ってんもー
 ぐるぐる回っちゃって許せなくって…ッ、それって…、
 結局私が一番せこいってことなんです。
 …私は、みんなから、軽蔑されても、
 文句の言えない女んです…ッ!!」
「えぇ…!?泣くことないじゃん!!」
「だって…、みんなに軽蔑されるんでしょ…!?」
「いえいえ誰も軽蔑してないって。」
「でも…、4万の損って思ったんですよ私は。」
「いやーうーみんなそんなの思ってるって。」
「いやでも気休めはいいよ。」
「ほほほ、ほんとだよ?
 …あ、あ、あたしだって売っちゃうもん
 5万って言われたら。んもーすぐ売っちゃう!!
 ほほ、ほんとだよ。」
「……ほんとに?」
「うん…。あたしらえらいよ。だって…、
 自分が最低だって知ってるんだから。
 それって、めちゃめちゃラッキーだよ?」
「…………。」
「また同じこと繰り返すかもしれないけどさ、
 でも…、自分が最低だって言って泣くのは、
 いいことだよ…。」

あー、もうどうしよう、好きが止まらない。
基子の気持ちがわかるからこそ、
きずなの言葉がダイレクトにしみる…。
こんな最低な私でもいいんですね?という。

そこから間々田さんや響一などと出会い、
基子は無事実家から離れ、
「ハピネス三茶」で暮らすことになる。
夕食後、響一が置いていったケーキを
囲っている基子と教授。

「私ー、
 34歳までにしておかなければならないこと、
 …何一つやってこなかった気がします。」
「人間には…、年齢なんてないのよ。
 エディプス期を通過した者と
 そうでない者とがいるだけなんです。」
「…は?」
「あなたは今日、
 エディプス期を通過するための一歩を
 踏み始めました。違いますか?」

「エディプス期」=性器に心的エネルギーを
向けられる3~6歳ごろまでの時期、と…。
わからぬ…。
男の子の母親離れがどうの、
と書いていたので、親離れのことか…?

教授の、「年齢なんてない。」という言葉好き。

はー、止まりません、感想。
本当に内容に古さを感じない。
イタい言い方をすればむしろ、私の居場所だ。
辛かったらここへ戻ってこればいい。
そう思えば、生きるのも少し明るくなる。