映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

すいか7・8話

主演:小林聡美

7話。
才能も胸もない基子に豊胸手術をすすめる母、基子はほかの住人にはある才能を見つめだす。
8話。
母ががんだと発覚した基子、単位欲しさに教え子が自殺未遂をした教授夏子…、それぞれの休日が描かれる。
 
【ネタバレ】

はぁー、好き。
精神的に疲れていたり、しばらく、このドラマの脚本家・木皿泉さんから離れていたら、しみる。
好き。
ヤッパリ食事シーンがいいよね。
朝と夜の食事って完全にプライベートなのに、そこに他人がいる、という非日常。
それが頭り前に、温かい雰囲気で行われてるから、いい。

でも7話あたりから、それぞれの悩みがあいまいで、完全に吹っ切れることもないから、視聴後は微妙。
空気感は1話から安定してるので、癒されるんだけど。

基子のやってみたいこととして、ペーパーだけど運転をすること。
きずなを助手席に、浜辺に行き、砂場にきずなは昔亡くなった姉の遺品を埋めだす。

基「きずなさんってもっと自由な人だと思ってました。」
き「…フフッ。あたし?」
基「…うん。だって好きな仕事してるし、好き勝手生きてるように見えたから。」
き「ふんっ。描きたいもの描いて、それが全部載せてもらえると思ったら大間違い。」
基「そうなんですか?」
き「も、直しに次ぐ直し。でもー、それに抵抗してたら仕事なくすし。大体、自分が何描きたいのかもうわかんなくなっちゃう。」
基「そうなんだぁ…。」
き「そんなのしょっちゅうですよ。」
基「ふーん…。」

自由に生きてるように見えるきずなも、それなりにしがらみを持って生きている…。

独身の娘を持つ母たちに向けて講義をしているリーダーと、還暦前くらいの教授。
かつては師弟関係だったようで、ハピネス三茶で再会し、縁側で話している。
リーダーと教授は同じ研究をしていたが、リーダーは海外へいき、おかまになって帰ってきた。

リ「失敗…、したかも…。」
教「そんなことないわよ、よくできてる、とってもきれいよ。」
リ「あ、いやそうじゃなくて。…あたし手術する前は、いろんなことがうまくいかないとね、自分が男だからだと思ってたんです…。男だから差別されるって。男だからまともに…、相手にしてもらえないんだって…。」
教「……。」
リ「でも違ってました。男、女?そんな問題じゃない。これ僕自身の問題だった。」
教「でもシンギングドッグの研究したいって言ったのも私のせい?」
リ「最初はそうです。」
教「でも研究してるうちにどんどんのめりこんでったのよね?」
リ「えぇ。すごーく彼らに惹かれて。」
教「ヤギタ君鳴きまね上手だったものねぇ。」
リ「はい。オ、オ、オ、オォーーン!!ッハハ。」
教「はは。」
リ「あははは、…あのね、あれから研究チームに入って、ニューギニアに行く予定だったんですよ。」
教「うんうん。」
リ「でも…、僕がゲイだってことがチームのメンバーにばれて、僕と一緒に山に入るのいやだって言いだして、仲間外れにされて。」
教「…そうだったんだ。」
リ「で僕あったまにきて、研究費持ち逃げしてカサブランカへ…!!」
教「…それで切っちゃったのね。」
リ「……。でも…、間違ってた…。」
教「……?」
リ「僕がゲイだから仲間外れにされたんじゃない。…僕が、…いやな奴だったから。」
教「……。」
リ「……。…ふっ。はぁー、僕の人生…、これでよかったのか…。」
教「……。もちろんよ。だって自分で決めた道じゃない?」
リ「……!!」

毎回、教授の説得力半端ない。
単純な言葉しか言っていないのに。
年配の人が言うからだろうか。
たぶん、大学を出て教授になってもハピネス三茶に住み、自分を曲げないから生き方をしてるからだろう。
地味な人生だけど、自分がちゃんと選んだ生き方をしているんだと思う。
どんな生き方でも、その人が満足なんだったら、いいよね。

8話。
8話もこれといったキャラクターの変化はなかった。
基子が母にやさしかったのがちょっとうれしかった。

セリフがやはり素敵なの多かった。
教授が、飛び降りた学生の病院にお見舞いに行ったとき。
生徒は足を骨折し、起きているが教授の言葉は聞かないふりで教授と反対のほうを向いている。

「でもこの仕事を選んだのは自分だから、何が起ころうとも逃げずに、どんなことも引き受けて、生きていくつもりよ。自分の人生は、だれも肩代わりしてくれないものだから、自分で責任を負うしかないのよ。……。…はぁ。でも本当のこと言うと、あなたがもし死んでたら、そのことを背負いきれなくて、大学もやめて、あたし何をしたらいいかわからなくなってたかもしれない…。……。生きていてくれてありがとう…。……。あたしたちはまだまだラッキーよ。」

あたしたちはまだまだラッキー、か…。
生きているだけラッキー。
重たいもの背負わなくてラッキー。
自分が今底辺だと思っている悩みも、見方を変えればラッキーなのかな。

物語の最後、がん宣告をされた基子の母、就職のため札幌へ向かう響一、母ががんだと知った基子、教え子が自殺未遂をした教授、響一が札幌へ行くと知ったきずな、ずっと一人ボッチの馬場。
それぞれいろいろな思いを抱えながら、大家ゆかちゃんのナレーターで締める。

『それでも人類は生きてゆかねばならない。教授曰く、どんなことも受け入れる根性さえあれば、生きることは、怖いものではないそうだ。』

生きてゆかねばならない。
生きるって本当に大変で、とても重い。
嫌になることはしょっちゅうだけど、自分はまだまだラッキーなんだと自覚して、生きていこうと思う。