映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

木皿泉 物語る夫婦の脚本と小説

木皿泉本人たちへのインタビュー、
ラジオドラマのシナリオ、
著名人によるエッセイや論考…、
「すいか」や「野ブタ。をプロデュース」の
脚本を書いた木皿泉の大特集!!

すっごいマニア向けの本だけど、
木皿泉作品かつ木皿泉さんの考えが
好きな私には大満足でした!!
前回にも感想を書いた「晩パン屋
の収録はもちろん、評論家たちの
木皿泉考察がすごく面白かった。
長谷正人さん(映像文化論)は、
初めて観た木皿泉作品
セクシーボイスアンドロボ」の序盤では
話の展開がばかばかしく
あまり好印象ではなかったらしい。
だけど毎回物語の締めに、
惹かれるようなセリフがあるため
はまっていったという。

『彼らの作品は、
 ストーリーのゆったりとした流れの中で
 登場人物たちの変化がじっくりと
 伝わってくるような日常的なドラマとは
 思えない。先にも挙げたように、
 登場人物たちの口から人生論にかかわる
 決定的なセリフが出てくるのを聴いて
 味わうような独特の
 知的ドラマになっている。』

雑賀恵子さん(農学原論、社会思想史)は、

『それぞれのシチュエーションには、
 テーマがある。
 個々のテーマは異なるものの、
 木皿ドラマの奥底に流れる
 伝えたい思いは、
 生きることへの励ましだ。
 窒息しかかっているものに向けての
 励まし。
 平凡でありふれた日常でありながら、
 不安定さを隠し持ち、おびえ、
 手探りしながらぎこちなく
 今日をとりあえず生きている、
 そういった人間たちがそこにいる。
 あるいは、ひどく妙であるのに、
 何の衒いもなく、
 平然としているけったいな人々。
 どこかゆがみ、それていて、
 不安げに揺れているにもかかわらず、
 しっかりとした輪郭を
 浮かび上がらせるもの…。だから、
 木皿が書いた世界に触れるものは、
 その世界の中で<自分と同じようなもの>
 が存在しているのを直感し、
 自分の息苦しさが
 いかなるものであったのかを見出し、
 自分が存在することをすでにして
 許されていることに安どと
 励ましを感じるのだろう。』

ということを唱えていて、
私の思ってることまんまだった。
(だから私は高橋優さんの音楽も
好きなんだな、とも思った。)
評論家も作家も役者も
ほとんどの人が言ってるのは、
木皿泉は目に見えないものを描いている。」
ってことだった。
目に見えないものはニュースや
ドキュメンタリーでは映せない、
目に見えないものと目に見えるもの
同時に映せるのが創作(ファンタジー)だ、
ということを言っていて、
なんとなくわかるようなわからないような…。
「目に見えないこと」って妖精や妖怪だったり
人と人との絆だったり、幅が広いから
もうちょっと私は勉強が必要かな。