映画・小説の感想棚

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あしながおじさん

孤児院で育った18歳の女の子ジュディは、
名前も顔も知らないある評議員に気に入られ、
大学とそれに関するすべての費用を
出してくれることになり…!!

本当に素敵だった!!
何から話そう…!!
本編の良さももちろん語りたいし、
作者のことも語りたい。
物語は…、
大学に入ったジュディが
あしながおじさんに送る手紙で話が進みます。
これは森見登美彦さんの、
「恋文の技術」と同じやり方。
調べたら、書簡体小説という、
ちゃんと、小説の形式であるらしい。
18世紀からフランスなどではやったよう。

感受性豊かなジュディ、
勉強や自分の生い立ちに苦労しながら、
すくすくと大人の女性になっていく。

「私は一秒一秒を楽しみ、
 しかも自分がそれを楽しんでいることを
 自覚しているのです。
 たいていの人は生活しているのではなく
 競争しているのです。
 地平線のはるか彼方の決勝点に
 一刻も早く着くことばかり熱中して、
 息を切らせてあえぎながら走っていて
 自分の通っている美しい静かな田園風景など
 眼にも入らないでいるのです。
 その挙句にまず気が付くことは
 自分がもう老年になり、
 疲れ果ててしまい決勝点に
 入ろうが入るまいが、
 どうでもいいことになっているのです。」

「私にあまりいろいろとぜいたくを
 覚えさせるのはどうぞおやめください。
 人間というものは持った経験のないものは
 持たないでいても平気でいられるものです。」

((何でも知っている作家が自分の人生の
本を書いたら、という空想の話から))
「ーーー読んだことを決して
 忘れてはならないのです。
 そしてすべて自分がこれからすることと、
 どんな結果になるかを事前に
 はっきりと知っていて暮らすのです。
 それからまた自分がいつ死ぬか
 正確な時刻まではっきり承知の上で
 一生を送るのです。
 そういうことだったらいったい
 幾人ぐらいの人がその本を読むだけの
 勇気を持っているとお思いになりまして?
 また希望もなければ驚くようなこともなしに
 一生を送るという代償を払ってもなお
 その本を読みたいという好奇心を
 抑制することのできる人が
 何人あるとお思いになりまして?」

「でも取り急ぎ申し添えておきますが、
 私は若くて幸福で、元気いっぱいです。
 おじさまもそうでいらっしゃると存じます、
 若さというものは幾度もめぐりめぐる
 お誕生日とは関係ありません。
 精神がはつらつとしているかどうかが
 問題なのです。」

日常を大事にする系のキャラクターは好きだ。
だけどジュディ自身、
初めて訪れたロック・ウィローの田舎に
感動していたのに、長くそこにいると、
話し相手がいない、退屈、などと書いていて、
やっぱり人間の考えは変化するなぁと思った。
ジュディも、いつもいつも日常に
感謝していられないんじゃないかな。

「でも私はもともと平凡な平和なんか
 たいして好みませんでした。」

って書いてるくらいだし。
小説家や女優になるのが夢だし。
しかし根底には、
日常やおじさまに感謝の心は忘れていない、
ってことだろう。
ジュディの義理がたくてまじめなところが好き。

落ちは、わかっていたけどさらに
全然違った方向で終わって、感動…!!
あしながおじさん
めちゃくちゃ嫉妬ぶかそうだけど大丈夫か?
ジュディを自分のものにしたくて
あんなに金をつぎ込んでいるんでは…。
それどころか、もともとの支配欲から
今まで孤児院にお金を出してきたんでは…、
とさえ思えてきた…。
ジュディの今後が心配だけど、
精神が大人だし自分の意思を
ちゃんと持ってるから大丈夫かな。
あしながおじさん
今まで男の子にしか支援しなかったのは
なんでなんだろう。
あの嫉妬深さから、
過去に女嫌いするようなトラブルが
あったんじゃないかと思ってしまう。
結構変わり者っぽいしな。

続編を調べると、
ジュディの大学の友達サリーが主人公の
書簡体小説
ジュディが生活したジョン・グリア孤児院の
改革を任され奮闘しているらしい。
てことはジュディ、サリーに、
孤児院出身だということを打ち明けたのか。

いやー、よかった。
書簡体小説って、「恋文の技術」でも思ったけど、
手紙の書き手主人公のキャラクターが
深く深くわかるな…。
ジュディが今何の作者にはまっていて、
その理由、とか。
「彼女(作者)も世間を知らずに育ったのに
こんな物語が書けるなんて。」って。
細かいところにもちゃんと
ジュディの気持ちがある。
とても面白かった。

作者のジーン・ウェブスターさんは、
上流階級に生まれ、
勉強していた経済学に関連し、
孤児院を視察した。
そしてそういう社会事業に興味を持ったらしい。
39歳になり子どもを産んだ2日後に
亡くなったと…。
産褥熱というものらしい…。