映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

ハッピーボーイ

ジェリー・スピネッリ

人より純粋なジンコフが
成長していく様子。

小さい頃のジンコフは、
よつばと!」の
よつばちゃんみたいやから、
もっと昔のジンコフを
見たかった。
ジンコフ自身大人に
近づいてるのわかるから、
ガムの石を大人に
触らせたくなかったんかな?
大人になっていくのは
いいけど、
子供の気持ちを忘れるのって
こんな寂しい
ことなんや…。

憎しみとかないけど、
派手じゃなく切ない話。


【ネタバレ・再読】

悲しい物語だな…。
日本のタイトルでは「ハッピーボーイ」だけど
英語の原題は、
「負け犬」「敗北者」という意味がある、
「LOSER」らしい。
こっちの方がしっくりくるな…。

ここ最近再読した、「スターガール」、
「ラブ、スターガール」と同じ作者。
この二作の主人公スターガールも、
場の空気を読めず他人から疎まれ、
しかし本人はいたって幸せな女の子。
「ハッピーボーイ」の主人公ジンコフも、
何をやっても愚図で周りから疎まれるが、
本人はいたって幸せな男の子。

小学校に入ったころは、ほほえましかった。
「身の毛をよだつ」汚い字を書いて
先生を困らせても、
ジンコフ自身は明るくて学校が大好きだった。
それは、両親の育て方のせいも
あるのかなと思った。
「スターガール」の両親でも思ったけど、
子どもを強く否定しない育て方。
ジンコフが楽しみにしていた
『子どもを職場へ』の日、
郵便局員の父はどうしても
子どもを連れて仕事にいけない。
だからわざわざ仕事が休みの日曜日に
ジンコフに手紙を書かせ、
ジンコフのために街を回った。
そういう親の配慮が、純粋なジンコフを
形成していったんだと思う。

しかし、4年生の時の運動会。
ジンコフを気に入っていた担任が、
ジンコフをメインのリレー選手にいれてしまう。
ジンコフのせいでチームは負け、
チームメイトはジンコフを恨み、
本人も辛い思いをしてしまう。
これがきっかけで、周りが具体的に
ジンコフを疎ましがるようになる。

そしてさらに、
ジンコフには決まった友達がいない。
ビンズという男の子と友達になるが、
ジンコフの明らかに間違った距離感で、
ビンズは離れていった。
そういうとこも切ない…。
ここらへんで
両親も気づけばよかったのかもしれない。
ジンコフには友達がいないから、
学校でうまくやれてないんじゃないか、と。
ジンコフ自身はいい子だが、
明らかに集団生活からずれている。

はー、切ない悲しい。
ジンコフも、学年が上がっていくにつれ
いろいろ考えるようになる。
文体も、序盤は第三者が語るだけだったが、
終盤は、
ジンコフのモノローグもたくさん入ってくる。
いろいろ考えるけど、
やっぱり周りの同学年より劣っている…。

最後は、少しだけ救われたかな。
たぶん周りの同級生も
精神的に少し大人になって、
ジンコフの見方を変えようとしたというか。
それでも、切ないけどな。
ジンコフはこのまま大人になっていきそうで、
ずっと友達出来なかったらどうしよう、
と考えてしまう。

読みやすかったけど、悲しいお話でした。