
作者:木皿泉
NHKのドラマのシナリオ本、すいか<1>の続き。
──────────────────────────────
面と向かって相手に説教できる大学教授の夏子も、
大好きな住人を支えるために料理の研究をするゆかも、
自分の生き方に背くから大手出版社をけった絆も、
今の生き方から抜け出したくて3億円横領した馬場も、
自分らしく生きているように見えて、
それぞれみんな悩んで生きている。
唯一、基子はこれといった信念も行動力もなく
悩んでるから、主人公になったのかな、と思う。
そしてそんなすっきりしない基子と、主要メンバーの中では
一番人生経験のある夏子との会話が、すごく刺さる。
「私は、自分の20年先まで見えるんですよね。
あんまり、幸せそうじゃない自分が、見えるんです。」
「それは、今のあなたが考えてるだけの未来でしょう。
本当は、どんな20年後が待ってるかなんて、
誰もわからないんじゃない?」
「でも、大体のことは、想像できます。」
「じゃあ、あなた、自分がハピネス三茶に住むって、
思ってた?友達があんな事件起こすって、想像してた?」
「あ、いや、それは…。」
「基子さんは、ハピネス三茶に来て、楽しい?」
「え?
…そりゃ、実家にいる時よりは、百倍ぐらい楽しいです。」
「それは、どうして?」
「どうしてって…。」
「20年先でも、今でも、同じなんじゃないかしら。
自分で責任をとるような生き方しないと、
納得のいく人生なんて送れないのよ。」
書きおろしのラストも
全員幸せな温かい展開で終わるんじゃなく、
「すぐそこにある死」と向かいながらもそれぞれ幸せに生きる、
という終わり方で、「終わりというのは必ず来る」、
「変わらないものはない」といい続けてきた
この作品らしいな、と思った。
【再読・ネタばれ】
基子は、母や友人の馬場ちゃんとの関係がある。
絆には、死んだ姉や恋人未満の響一との関係がある。
夏子には、大学の仕事や大学での人間関係がある。
それぞれの人生において悩みも違うし、休日が1日あったらみんなべったり一緒というわけではない。
でも朝ご飯と夜ご飯は4人一緒に食べ、他愛のない日々は過ぎる。
大学教授を辞めさせられた夏子は旅をするためハピネス三茶を離れ、その後いつかは分からないけど、基子と絆もハピネス三茶を出た。
離れ離れになっている間はみんなお互い連絡とってなかったよう。
10年たって夏子がハピネス三茶に帰ってくるとのことで大家のゆかから連絡を受けた基子も絆も急いでハピネス三茶へ向かう。
夏子は余命付きのがんであることを告げ、全員ショックを受け、基子も絆も、「教授の介護を手伝うから」とハピネス三茶に再び住むという。
介護っていくら家族でもしたくない人が多いのに、ゆかを含めてこのメンバーは、夏子の介護ができることを喜んでいる。
それだけ、本当に深い人間関係が結ばれていたんだろうな。
夏子の病気の話が終わり、夜の中庭で久しぶりに再会した基子と絆がしゃべる。
「結婚するんですか?」
「んー、シングルマザー?」
「あー、そーなんだ。」
「そっちも彼氏ができたって、間々田さんが。」
「いや、それは勘違い。相変わらず独身の信金OL。」
「そーなんだ。」
「世間的に見たら、私たちって不幸なんでしょーかね。」
「だろうね。」
「そーでもないのに。」
「どっちかというと幸せのよーな気がするよね。」
「教授のことも、家のごたごた───、両親が離婚するかもしれないことも、私、どこかで受け入れようと思っています。」
「私も、子ども産むの迷わなかった。」
「私たち、大人になったのかな。」
「そうか、そうだね。いつの間にか、ちゃんと大人になれたんだ、私たち。」
10年たって状況が大きく変わったり変わらなかったり、ハピネス三茶の住人は変わらず各々の人生を生きている。
それはたぶん私も一緒で、今後10年20年といろいろありつつも自分の人生を生き、少しずつ自分のこと理解していって、笑って楽しく暮らしていければいいな。
っていう、ほっこり前向きになれる話でした。