映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

すいか 5・6話

主演:小林聡美

社内報に書く「友達」について悩む基子と、
縁を切った父親から
「ハピネス三茶」で滞納していた家賃を
送られてきたきずなの5話。
死者が帰ってくるお盆、それぞれの住人が、
自分たちとかかわりの深かった、
「死者」のことを考える6話。

【ネタバレ】

5話。
社内報に書く「友達」を教授にするか
きずなにするか迷い、結局二人の
じゃんけんで勝ったきずなが「友達」に。
二人の写真を撮るため、
基子はきずなの部屋に入ると、
きずなは漫画の仕事の途中だった。

き「なんでこう描いても描いても貧乏なのかねぇ。
 ま、子どものころの夢がかなったと思えば
 幸せなんだけどねぇ。」
基「あー漫画家になりたかったんですかぁ。」
き「いやじゃなくてぇ、
 こう押し入れの中で寝るとか、
 あと猫を飼うとか。」
基「あっははははは、ささやかな夢なんですね。
 へへっ。」
き「……。…あのね、あのね、
 一人暮らしを始めてまず最初にやったのは、
 お茶漬け?あ、でも、あの、
 お茶碗の中にお茶を入れるんじゃなくって、
 こう、湯飲み?湯飲みの中にご飯を入れて、
 直接こうやってワシャ―って食べるやつ。
 子どもの時からそれがやりたくてやりたくて。」
基「わかりますそれ!!」
き「え?」
基「あのねぇ、あたしは、はし箱!!
 あのー、あん中にこう、
 ご飯つめたくなりません?」
き「は、はし箱にご飯?」
基「そうそうそう。ないですかぁ!?
 私あのほっそーい隙間にこう
 ご飯みっちりつめてこう閉めたりあけたり。」
き「ない。」
基「え…。」
き「…でも、でも!!
 ななな、なんかわかるなんか。へへっ。」
基「へへっ。」
き「で?やってみた?はし箱。」
基「やりませんよそんな馬鹿なこと。」
き「なーんだ
 家出たんだからやってみればいいのに。」
基「だぁーってそんな非常識なこと…。」

その後二人の関係はややこしくなる。
基子は社内報にきずなのことを、
「クリエイティブな仕事」や、
豪邸に住んでいる実家のことも書き始めた。
しかしきずなは、実家のことは好きではないし、
漫画のことも、「クリエイティブじゃない、
家賃を滞納しているエロ漫画家だ。」と怒り出す。
本当のことを書いてくれと言いだすきずな。

「結局、基子さんが恥かくからじゃないの?
 世間体が悪いから、
 だから書けないんじゃないの?」

と。

社内報も進まないまま基子は、
銀行のお客様の陶器の人形を割ってしまう。
ペアの人形なので、片方を借りて、
割ったものと同じものを探すために歩き回るが、
なかなか見つからない。
食卓できずなと二人きりになり、
その人形はどうしたのかと聞かれる基子。

基「これお客さんの。あたし壊しちゃって。
 …で、おんなじ物探したんだけど
 なかなかなくて。」
き「もしかして見つかんなかったらクビ…、とか?」
基「いやまさか…。
 でもあたしー、ヤッパリさがしたいんです。」
き「…いや、無理じゃない?
 だってこれすごい古いものだし、
 謝っちゃった方が…。」
基「うちの課長も同じこと言ってましたよ。
 お金出せばそれで済むとか、
 時間ないから次に行こうとか、
 …体裁のいいことだけ言っとこうとか。
 …そうやって馬場ちゃんのことも
 なかったことにして。
 エロ漫画家をクリエイティブな職業なんかに
 言い換えたりして。
 親いるのに、いないように暮らしたりして。
 あるのに―…、ないことに、
 するっていうのは…、間違ってると思うんです。
 そんなに簡単に切り捨てて生きて行って、
 それで、いいのかなって。そう思うんです…。
 いないことにされるのは、辛すぎます。」

人形は結局、きずなの実家に同じものがあり、
きずなは双子の姉が死んだ以来
実家に帰ることになった。

この5話のテーマは、「世間体」なのかな。
いちいちテーマなんてないかもしれないけど、
そう感じた。

教授も、恥とかあまりない人だな。
冒頭で表彰されてもらった民族衣装的なものを、
ためらいもなく着て東京を歩いていた。
横にいた助手みたいな人は、
恥ずかしいから、と隣を歩きたがらなかった。
そもそも教授は誰よりも自分を持っている人で、
人がいる前で知らないおじさんと
けんかしだすだしな…!!
敵に回すと怖い人。

さいごの、
締め切りが迫っているきずなの漫画を、
住人みんなで手伝うシーン好きだなぁ。
みんなで夜中ぶっ通して何かをする、
って話が好きなのかも私。
大人の青春な感じがする。

6話。
夜、自室でドラマを見ていた基子。
愛だの恋だの言って殺してやるという展開に
つまらなく感じテレビを切ると、外から、

「殺してやるー!!」

という叫び声が。
基子は外に出て、野次馬とともに、
警察沙汰になっている男女の修羅場を
見ていると、教授もやってきた。

教「こんなのはまだまだ
 修羅場とは言えませんね。」
基「…ッ教授も来てたんですか!!」
教「けれどこういうパフォーマンスは、
 現代において貴重かもしれませんよ。
 愛も恋も小粒になりましたからね。」
基「…わっ。ちょっ、はだしですよ教授!!」
教「あら。…でもやる方は必死なんですから、
 見る方も必死で駆けつける。
 それが礼儀というものです。」

冷やかしの野次馬が大嫌いなんですけど、
教授みたいな考え方なら
野次馬も許されるのかもしれない。
もちろん事件の規模にもよるけど。
「見る方も必死で」とか笑った。

男女のやり取りが終わり、
ハピネス三茶へ帰っていく教授と基子。
基子のスリッパを一つ教授に貸し、
お互い肩を組んでケンケンして
戻っていく姿がかわいかったな。
34歳と60歳前後?の独身女性、
見栄えとか気にしない生き方が素敵。

翌日は休日のようで、
基子も間々田もハピネス三茶で過ごす。
お盆ということで、
住人それぞれ、死者と向き合う。

きずなは、両親の言いなりのように
育って亡くなってしまった姉のことを。
教授は、30年前に、「30年後迎えに行く。」
と約束して亡くなったリチャードのことを。
基子は、生物上生きているが、
誰からも忘れられ世間的には
死んでいるような存在の馬場ちゃんのことを。

3億円横領して逃亡中の馬場ちゃんを、
「死者」と表現する感じが切なくて好き。
基子の、
「死者もお盆には帰ってくるんだからね。」
っていうナイスな優しさも。

基子と馬場ちゃんの関係、
あったかさと切なさがまじりあっているな…。
馬場ちゃんは、基子のフルネームを使って、
田舎でバイトをしているよう。
公衆電話から、基子に、
二人で行っていた喫茶店に帰りたい、
とつぶやいた。
基子はすぐさま、その喫茶店へ、
馬場ちゃんが好きなお菓子を大量に
購入し行くが、なかなか来ない。
馬場ちゃんは道行く他人に、
いいお米を預けて、
それを、きっと喫茶店にいるはずであろう
基子に渡した。
直接会えないの悲しい…。
でも二人とも、「喫茶店に来るだろう」
って信じあってるの良い…!!

ていうか5話で基子、
「いるのにいないものとして。」
って母親のことあげてたけど、
結局おざなりにしてるな。
気持ちはわかるけど。
その時反省しても、時間がたったら、
すぐ反省した気持ちを忘れる…。

結局、教授は死ななかったし、
きずなのお姉ちゃんも本当は最後に
自由に生きれたことを知れた。

その日の夕食は、馬場ちゃんから
もらったお米で炊いた、おにぎり。
4人、食堂にそろって食べる。
毎回思うけど、この、
4人そろってご飯を食べる、
というシーンが本当に好き。
みんなそれぞれ人生や仕事があって、
でも食堂では一緒に集まるという。
今日も無事終われてよかったねという、
ほっこりした空間を感じる。
最後は、いつも、
大家のゆかちゃんのナレーションで終わる。

『死んだ人と生きている人が、
 ごちゃ混ぜになった夜。
 私達が食べたおにぎりは、
 この世のものとは思えないほどおいしくて、
 食べられるだけ食べた後、
 深い眠りについた。
 もし宇宙人がこの夜の私たちを見たなら、
 生きている幸せがどんなものか、
 一目でわかったのにと思う。
 …生きている幸せを見ることができるのは、
 そこから遠く離れた人だけなのかも
 しれません。幸せの真っ最中の本人は、
 きっと、気づくことさえないのです。』

やっぱりみんな笑顔で終わる結末が良いな。
好きだ。
ドラマは1度全部見ているが、
10話まであと少し…、見るのもったいない。