映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

熱帯

作家、森見登美彦は、学生時代に古本屋で購入してなくした『熱帯』について考えていた。
『熱帯』の読者はほかにも何人かいたが、みんななくしたりするなど結末を読めておらず…!!

【ネタバレ】

解釈がすごく難しかった。

佐山尚一は節分祭りに神社でカードボックスを介して、現代とは別の世界に行く。
そこの熱帯の無人島で1か月ほど、冒険を繰り広げる。
その世界で描き上げた手記が『熱帯』。
佐山は元の世界に戻ってくるが、現代の世界に違和感を覚える。
おそらくパラレルワールドのようなもので、似てるけど、別の世界。
佐山はそこで38年間過ごす。

で、いいのかな。
謎なことが山ほどある。
『熱帯』を、佐山は現代に持ち帰れなかった。
なのになぜ、森見登美彦や白石さんや池内さんは、『熱帯』を読めたのか。
パラレルワールドだとしても、どこから『熱帯』は現代に入ってきたのだろう。

また、千代さんの後を追って『熱帯』を調べに京都に行った池内さん。
池内さんの手記は、マキさんのおじいさんの図書室の中で終わっている。
きっと池内さんはあれから、佐山のように、別の世界に行ったんだと思う。
そうだとしたら、そこで冒険をして自分だけの『熱帯』を書いて、パラレルワールド先へ戻るのかな。
池内さんの先をいった千代さんも同じ。

「『熱帯』はあなただけの物。」という意味深な言葉を発していた千代さん。
千代さんは、『熱帯』は佐山の手記だということを知っていたのかな。
現代は佐山がいない世界で、切ない。
いない理由をみんな分かっていないのがまた怖い。

…こういう解釈でいいんだろうか。
ほかにもわからないこといっぱいあったけど、書き出したらきりない。

表紙の仕掛けにセンスがあふれてた。
この表紙は、森見登美彦がなくした『熱帯』にインスピレーションを受けて書いた『熱帯』の、開いた本を島に見立てているという表紙デザイン。
そのカバーを取ると、佐山尚一が書いた『熱帯』の幾何学模様の表紙デザイン。
そのセンスがまた謎を呼んで結局わけわからんなるんやけども。