映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

バケモノの子

両親が離婚し、引き取られた母が死んで、一人残された9歳の少年連。
親せきのところへ行くのが嫌で渋谷をさまよっていたら、バケモノたちの住む世界へ迷い込んでしまい…!!

【ネタバレ】

とてもよかった…!!
おおかみこどもの雨と雪」のような、ファンタジーの設定に置かれながらも、主人公は一人の人間としてリアルに悩み、動いている。
バケモノたちの住む異世界で、肉体的に強くなりつつ、8年がたつ。
8年異世界にいるっていうのもすごい。
連は、このまま異世界で暮らすのか人間界で暮らすのか悩む。
なぜかというと、8年ぶりに渋谷に戻り、離婚して何年もたっていない父親と再会したから…!!
楓という女子と知り合って勉強に興味が出て大学受験というみちも候補の一つに入ったから…!!

私は、この映画は完全に子ども向けだと思っていたので、異世界に迷い込んだ主人公が、異世界での問題を、異世界で解決して、それで終わる映画だと思っていた。
でもそうじゃない。
連の、「これからどう生きていくか」という人間としての悩みがとても丁寧に描かれていた。
だから、面白かった。 
 「おおかみこどもの雨と雪」みたいな。
雨も雪も、それぞれオオカミの血を与えられて生きて、生き方に悩み、さいご決断する。

この映画、それぞれのキャラクターの視点も良かったな。

連の親代わりになる熊徹というバケモノ、不器用だけど、連を愛している。
熊徹のライバル猪王山は、人間界で拾った人間の子ども一郎彦を自分なりに愛情をかけ育てる。
自分が人間だと知らずバケモノの世界で育った一郎彦は、自分は何者かと悩み、人知れず心の闇を抱える。

みんな自分なりに正しいと思いながら、それぞれ生きていた。
せつない。