脚本家で小説家の木皿泉が、子供のころに感じた生きづらさや日常で感じる悲しみなどを赤裸々につづる。
新聞に連載されたエッセイを中心とした、亀梨和也さんとの対談やショートドラマの脚本も収録。
今回のエッセイもよかった。
一気に読んでしまった。
こんなこと書くの失礼だけど、夫婦で活動する木皿泉さんって、奥さんが介護者で旦那さんが被介護者だからこそ、カリスマ性が出ていると思う。
庶民中の庶民というか。
キラキラしたテレビ業界の中にいるのに、二人は神戸で、奥さんは日々の家事と介護に追われ、旦那さんは月に5日ショートステイを利用する生活を送っている。
エッセイを書いているのは奥さんのトキコさん。
トキコさんは、情緒が不安定で歩道を歩いていて一歩も動けなくなったり、救急車で運ばれたり、突然路上で涙が止まらなくなったりしている。
うつ病の経験を持ってらっしゃるのは知ってたけど、まだ治ってないのかな…。
路上で突然泣いたときは、警察に怪しまれ連行され、カバンの中まで調べられたそう…。
「警察官が私のカバンを引っ掻き回す手の先を見ていて、あっとなる。白い封筒が見えたのだ。何か月も前に講演料としてもらった2万円が、もらった時のまま内ポケットに突っ込まれていた。」
いや木皿泉の講演料2万円は安すぎるやろ…ww
そんなんやったら個人で木皿さん雇いたいんやけど。
私神戸行くし5万円はらうからトキコさんの話1時間聞きたいんですけど無理ですか…?
そんな感じで、とにかく庶民、しかもめちゃくちゃ恵まれてる環境ではないにもかかわらず、本人たちは幸せそうに生きている。
「そうだ、旦那に鯖寿司と甘栗を買って帰ろう。それは、旦那が救急車で運ばれた日に買って帰ったもので、結局食べずに腐らせて捨ててしまった。今日も、うまいものを二人で食べられるのだと足を速める。幸せというのは、こういう瞬間のことを言うのだろう。」
私たちドラマの視聴者や小説の読者は大半が地味でしんどい人生を送っている。
テレビの役者や業界人のように『特別』な人とは分かり合えない自信がある。
だからこそ、庶民の木皿さんが書く『地味な生活の中で肯定される庶民の物語』にはとてつもなく説得力があり、我々庶民はむさぼるように木皿泉の物語を求める。
物語というより、キャラクターかな。
共感できる地味なキャラクター。
「野ブタ。にプロデュース」で主演を務めた亀梨和也さんとトキコさんの対談もよかった。
亀梨さんの言葉で、あ木皿泉やっぱ庶民じゃないわと目が覚める。
「10代で木皿さんの作品に出ることができてよかったね、と業界の方々に言っていただくことも多いですし、僕自身、そう思います。」
亀梨さんの、「亀梨和也」というアイドルだからこその役者としての立ち位置みたいな悩みも垣間見れて面白かった。
KAT-TUNの『真面目』がすべて亀梨さんに集約されてるんじゃないかと思ったくらい真面目でしっかりされていた…。