映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

秒速5センチメートル

転勤族の子どもたかきは、
同じく転勤族の子どもあかりと出会い、
恋に落ちるが、
小学校卒業と同時にあかりの引越しで
離れ離れになってしまう…!!

 

【ネタバレ】


王道の物語が、
主人公の葛藤と行動によって
魅せられるとしたら、この映画は、
美しくて説得力のある背景と
ノローグで魅せてる映画やないかな。
新海監督が、
「実際の速度だったり
心が離れて行く速度だったり、
速さがテーマ」ということを
いっていたように、
あかりに会いたいのに
ストップしてしまった電車の中で
たかきが長い時間焦る気持ちや、
時は進んでいるのにあかりを
忘れられないたかきだけが
時間ストップしたままの感じが、
すっごくリアルに伝わってきた。
たかきとあかりの物語なので、
第二話の澄田の片想いの話は
別になくていいんやけど、
知らない誰かを想うたかきを想う
澄田の心境は、リアルで、
「やさしくしないで。」、
という気持ちもよくわかる。

めぞん一刻」の
三鷹とこずえちゃんや、
羽柴麻央先生の、「糸と釦」のように、
ずーっと好きだったのに、
仕方なく諦めないといけなくて、
でも時間がたてばそれぞれに
あった道を見つける、というような話。
バッドエンドではないけど、切なすぎる…。
ていうかそもそもたかきは最終
自分の道を見つけれたのか心配…。

続き、シナリオ考察。ネタバレ。

 

オープニング・イメージ
 小学生時代のたかきとあかり。
 桜の花びらが舞い、あかりに、「桜の落ちる速度は秒速5センチメートル」だということを教えてもらう。

テーマの提示
 あかりからの手紙と同時に、たかきの学校や家の生活を描いている。

きっかけ(4分の1)
 13歳のたかき。
 文通の中で、会うという約束。

悩みの時
 あかりに会う途中の電車が大雪でストップし、会いたいが、あかりには帰っていてほしいと願う。

第一ターニングポイント(3分の1)
 あかりと会えてキスしたことにより、13歳のたかきは、実際離れてる距離と自由に生きれるまでの年数があまりにも大きく、あかりとは一緒にいれないことを確信する。

第一章が終わる。
第二章はたかきたちに進展はなし。
次から第三章。


ミッド・ポイント(6分の5)
 20代後半になったたかき。
 付き合っていた好きでもない女性に振られることをきっかけに、あかりへの思いが消えてることに気付く。
 
こころの暗闇
 精神が限界になり仕事をやめる。

第二ターニングポイント
 たかきとあかりが夢で見た13歳の時の二人。
 二人のモノローグ。
 「そうやって、いつかまた、一緒に桜を見ることができると、私も彼も、何の迷いもなく、そう、思っていた。」
 あかりへの熱はないが、いまだに過去にとらわれているたかき。
 あかりも、たかきのことは忘れていない。

ED

フィナーレ
 日常にあかりを探してるたかき。
 あかりは新しい彼と結婚する。

ファイナル・イメージ
 オープニングで二人で歩いていた桜の道を、大人になったたかき一人で歩く。

 

【再視聴】

 

あのぎゅっと切ない心情を覚えているにもかかわらずやっぱり、あぁぁってなるな…。

 

静かな映画だった。

無音ではなく、よけいなアニメらしいわざとらしい音がなかった。

雪が降る音や、バイクを走る音、鳥が鳴いている音など。

声優たちの素人っぽい声もよかったな。

 

たかきは本当にずっとあかりのことが好きだった…。

高校を卒業して種子島から東京に戻り、大学を出て、就職する。

当然あかりとは会えず、ずっと心のもやもやが晴れないまま違う女性と付き合ったり仕事に向き合ったりしてた。

女性に振られたことをきっかけに自分を見つめなおす。

 

(この数年間、とにかく前に進みたくて、届かないものに手を触れたくて、それが具体的に何を指すのかもほとんど脅迫的ともいえるその思いが、どこからわいてくるのかもわからずに僕はただ働き続け、気づけば、日々弾力を失ってく心がひたすらつらかった。そしてある朝、かつてあれほどまでに真剣で切実だった思いが、きれいに失われていることに僕は気づき、もう限界だと知った時、会社を辞めた…。)

 

あかりへの熱が冷めていたことに無自覚だったのか…。

 

最後大人になったあかりは婚約者と腕を組んで歩く次のシーンで、いまだに“あかりに引きずられてる自分に引きずられてる”たかきはバーで1人のみしててほんま切ない。

うわあああってなる…!!

マジ人生…。