映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

ハルのふえ

草笛が得意の狸のハルは、山の中でほかの動物たちと演奏会をしていると、捨てられていた人間の赤ちゃんを拾う。
赤ちゃんはパルと名付けられ大事に育てられるが、音楽を学ぶために人間の世界で暮らすことになり…!!


【ネタバレ】

やなせたかしさん原作の子ども向けアニメで、とてもほっこりする映画だった。

子どものパルのことは大切だが人間のもとで育った方がいいと都会へやる狸のハル。
ハルを狸とは知らず、ハルのことを忘れたことはない都会で過ごすパル。

お互いを大事に思っている気持ちがすごく伝わってきて、良かった。

声優が「アンパンマン」の作品引き継がれていた。
ジャムおじさんの声、2020年に亡くなっていたの初めて知った。




呉書 三国志

長沙の大名であった27歳の孫堅は、戦が強く人望もあるため、程普、黄蓋韓当という優秀な部下がつく。
孫堅には、戦に出ると頭に血が上り敵を全員容赦なく殺す癖があった…。


【ネタバレ】

ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズの作者が書いたので、とても読みやすかった。
ひらがなが多くて、比喩があまりなく直接的な表現が多かったからかな。
登場人物同士の掛け合いも面白いところが多かった。

話は、「孫」家の物語。
まずは孫堅
戦が強く人望もあるため、良い部下が増え、どんどん勢力を拡大していく。
孫堅が36歳で戦死し、次を受け継いだのが当時17歳の長男の孫策
孫堅が死んだため孫堅の国は内乱が続き、孫策に残されたのは程普、黄蓋韓当の3武将のみ。
そこから孫堅は、持ち前のカリスマ性と戦の強さで父以上に勢力を広げるが、毒矢を受けて、25歳の若さでこの世を去る。
孫策を継ぐのが、7つ年下の弟、孫権
孫権は戦は強くないが国を治める力が優れており、内政に力を入れた。
良い部下をさらにそろえるなどして、やがて呉の大帝となり、70歳でこの世を去る。
ちなみに呉が滅びたのは、孫権の孫である孫晧の代。
即位するまでは孫策と比べられるほどの人物だったらしいが、即位すると気に食わないものを殺して自分の好きなものだけを置いていたらしい。

ここまでが本編。
最後の一分。

「建国の苦労を知らぬものが、わがままかってをし始めるとき、それが国の終わりになるのである。」

何とも言えない余韻で終わったわ。
3代目孫権は、人々が平和に暮らせるように、という意味も込めて勢力を拡大していたのにな。
それが自分の孫によって滅ぼされるとは…!!

戦いの場面が結構あり、グロく感じるところも多かった。
大切な人を殺されたから相手の一族全て殺す、という価値観が全く分からなかった。
これで人徳がある、というのだから本当にその時代に生まれないでよかった。
唯一孫権には感情移入できた。



ハイジ

主演:エマ・ボルジャー


幼いころに両親を亡くした9歳の女の子ハイジ、育ってもらったおばさんから、山に住むおじいさんのもとに預けられることになった。
山での生活にも慣れるが、ある日、車いすの女の子の話し相手になるようにとフランクフルトに行くことになり…!!



とてもかわいくてほっこりする映画だった。
ハイジが天真爛漫でとてもいい子。
両親が突然いなくなって、育ててくれたおばさんは意地悪なのに、こんな女の子に育つかな。
普通なら斜に構えてオトナを観察してそう。
山でのおじいさんはプライド高くむっつりしているけど、ハイジの方が先に、「ごめんなさい」と言える。
死んだ両親の育て方がすごく良かったんだろうな。

オトナのキャラクターが、いい人か嫌な人か、はっきり分かれていたな。
多分、ロッテンマイヤーも本当は過去に何かコンプレックスがあっての、あの嫌味な態度なんだと思う。

本当は長編として描かれる物語なんだろうな。
序盤の、おじいさんとハイジが山で暮らすところも、もっと長く見ていたかった。
クララとハイジの交流も長く描かれていたら、クララが立つところ、もっと感動したんだろうな。
それでも、とても良い映画でした。



ちょっとそこまで旅してみよう

漫画「すーちゃん」の作者、益田ミリさんの、国内から外国まで幅広旅行エッセイ。




一人でヘルシンキに行くミリさんが本当に楽しそうで、読んでてこっちまで幸せになってくる。
ミリさんは英語が苦手らしいが、積極的に行動し、行きたいところや食べたいものなど、たくさん挑戦している。

「40歳を過ぎ、何かが解決したわけじゃない。ぼんやりとした不安が振り払われることもない。でも、だけど、瞬間の幸せを認められる力が備わった。ヘルシンキの街を気ままに歩いているときの私の『幸せ』は、完璧な形をしていた。私を惑わすものなど、何一つなかった。」

『瞬間の幸せを認められる力が備わった』、って大切だな…。
それができる人が本当に幸せな人なんだと思う。
高い目標を達成することや、人に認めてもらうことを幸せにしていたら、できなかったときとてもしんどい。
もちろん、そういう気持ちが0でもだめだと思うし、それを糧にして成功していくタイプもいると思う。
でも人として、『瞬間の幸せを認められる力』がないと、生きにくい気がする。

ミリさん素敵な女性だな。

犬夜叉完結編 1~12話

奈落を追う犬夜叉一行、そして奈落の分身である神楽のさいごは…!!



【ネタバレ】

犬夜叉完結編。
神楽の最期が悲しい…。
奈落の分身として生まれた神楽だけど、いつか自由の身になるという目標を持っていた。
しかしかなうことはなかった。
奈落の手によって一度解放されるが、そのまま毒を注入され、瀕死の状態になり一人に。
本当に奈落は嫌味な殺し方をする。
その人の望んでいるものを一度手に入れさせ、直後に地獄に落とすということをよくする。

死ぬ直前の神楽の前に現れたのは、自分の意志で神楽の様子を見に来た殺生丸
恋心か別の情か、神楽にとって殺生丸は何か特別な存在であったことは間違いない。
だから消える直前は、笑顔だった…。
奈落は神楽をすべてわかっていたつもりだったかもしれないけど、神楽の気持ちは神楽のもの。
誰にも支配されることはない。
ほんの少しでも幸せを感じて逝ってくれてよかった。

犬夜叉」の中で一番このシーンが好きかも。
超切なくて辛いけど、絵としてもとてもきれい。
琥珀を逃がしたあたりから神楽株めちゃくちゃ上がってたので、応援しまくってたのにな。


単発ギャグへんのキツネ妖怪テスト回も好き。
七宝が主役回は、奈落を追うシリアス回の癒し。
安定のギャグで笑える。
弥勒と珊瑚もかわいかった。


ポジティブ心理学の挑戦

ポジティブな気持ちがあれば、人や社会に大きな良い影響を与えるということを唱えた本。




頭で前向きになりたくて購入。
あらすじをなんて書いたらいいのかわからなかった。

・うつになっていても小さなことでいいから今日一日良かったことを3つ書くこと
・家族や友達や恋人、誰か大切な人にいきなり感謝の手紙を書いて渡すこと

この本の作者のうつ診療のメニューではこういうことが組み込まれ、実際うつが軽減した患者もたくさんいると数字にして出していた。
このメニューは重度のうつ病患者にも効くらしい。

本の最後には自分の強みがわかる診断テストもついていて、面白かった。
私は、感謝とかの欄が高くて、リーダーシップの欄が低かった。
この強みテスト、就活の面接や職歴にめっちゃ活かせると思った。

月夜とめがね

夜遅くまで針仕事をしていた目が悪いおばあさん。
そんな夜中にメガネ売りが訪ねてきて…!




とってもおしゃれな本!
「月夜とめがね」という物語は、小川未明という人が書いた、随分昔からある物語。
私が読んだ「月夜とめがね」は、その物語にイラストレーターのげみさんがイラストを載せたもの。
装丁からもうときめく。
げみさんの静かできれいなイラストが、夜の情景や、琥珀のメガネによくあっていた。

文章では髪の長い女の子とあったけど、イラストはおかっぱだった。
その違和感を超えるくらい、げみさんのイラストは「月夜とめがね」の物語の魅力を引き出してたと思う。

クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ4人の勇者

地球の子どもたちの自由な落書きによってパワーをもらい空に浮いている島、ラクガキングダム。
近年落書きをする子どもたちが減り、ラクガキングダムは、崩壊の危機に立たされていた。


【ネタバレ】

アホなノリがクレヨンしんちゃんで面白かった。
出番少なかったけど、まさおくんは何してても面白い。

序盤は、大人帝国のような不気味さがあってよかった。
自由な発想を持たない大人たちは、ラクガキングダムの連中からはなから落書きさせてもらえず、壁に貼り付けにされるところ。
大人たちがいなくなり、延々と子どもたちだけが落書きさせられる世界の恐怖。
でも面白かったのはこのへんまで。

大人帝国のときは、大人がいなくなった世界でしんちゃんが、「トーチャンカーチャンを助けて今を生きる!」という強い意志を持って動いていたから、観てる方は感動した。
しかし今回のしんちゃんは、たまたま貼り付けにされているナナコお姉さんを見て、「助ける!」とふわっと意思を持つ。
でも仲間が増えたり、仲間の親子関係が描かれたりして、しんちゃんも一瞬ナナコお姉さんを助けることを忘れてた。
そこがやっぱり違うな。
グッとくる映画とこない映画。
しんちゃんの掛け合いとして見る分には面白かったけど、それやったら焼き肉やB級のほうが笑えたし…。

どうしても未だにしんちゃん映画は期待してしまうから、だいたいがっかりしてしまう。

シン・ゴジラ

主演:長谷川博已

東京湾に突如現れた謎の巨大生物、東京に上陸し、人や街を次々壊していく。
内閣官房副長官である矢口は、国民の安全を優先に判断・行動を起こすが、日本の政府はなかなか矢口の判断を受け入れなくて…!!


【ネタバレ】

一番の印象は、とてもリアルだったこと。
ゴジラや破壊された東京の街のCGがリアルだったし、人間の動きもとてもリアルだった。
命がけで逃げ惑う一般の人々と、会議室でもめている官僚たちの、温度差。
すでにたくさんの犠牲者が出ていて、自衛隊を動かすのに総理の許可がいるってなった時、判断を迫られた総理は、「憲法〇条が…。」と渋るとことか。
後は、会議室でもめつつも、国民を安心させるために会見を開かないといけない。
会見では何を言おう、とか。
なんか、災害の時に決断が遅かった時も、こういうことが起こっていたのかな、と、政治事情全然知らないのにリアルに感じた。
観終わった後調べると、監督の庵野さんは、東日本大震災の時の枝野官房長官に取材に行っていたとか。
さすが、こだわりがすごい…!!
だからこそ、ゴジラというファンタジーな生き物が登場する世界観でも、このリアルさなんだな。
それに、即決の海外政府と違い、丁寧に決断を重ねるところが日本政府独特なので、そこもまた「シン・ゴジラ」のセンス感じた。
日本を皮肉って作られているけど、これが海外が舞台だったら、この「シン・ゴジラ」の展開にはならない。
もっと熱く、賢い展開になったと思う。
 
監督が庵野さんとしって思ったけど、映画の中で出てくる肩書きのフォントが、「エヴァンゲリオン」のタイトル?のフォントにそっくりだと思った。
あと、「~作戦」とか、「エヴァンゲリオン」っぽい。
あんま詳しくないけど…。

中盤の、東京の真ん中でゴジラ放射線と炎を発射するシーンすごい迫力だった…!!
ある意味映画館じゃなくてよかった。
長いシーンで、とても大事に撮影されていた印象。

前半で、ごちゃごちゃしつつもそれぞれの正義で戦っていた、総理と大臣たち、その中盤のゴジラの犠牲者になる…。
計11名の死亡は衝撃だった…!!
日本の体裁を守ろうとする人もいたけど、国民の安全を第一に考えていた人もいたから、ショックだった。

ゴジラ解析チーム、主要メンバーはみんな残っていてホッとした。
大好きな市川実日子さんが残っていたので良かった。

ラスト、矢口が率いる解析チームの凍結作戦が成功し、ゴジラを抑え、人々はは安心を得て終了する。
が、ラストのカット、固まったゴジラのしっぽの先をよく見ると、人間の死体が固まったものが集まってできている。
意味深すぎる終わり方にネットで調べると、第5形態の始まり、と書かれていた。
映画内では、第3形態から第4形態になったゴジラが描かれていた。
研究者が、「形態は未知数」的なことも言っていたので、凍結させたゴジラは、第5形態になる寸前だった…!!
寸前、ではなく、これから第5形態になっていくらしい。
凍結される前のゴジラのしっぽの先は人の形をしていなかったから。
これから第5形態に入っていくのだろう、と。
詳しく第5形態を調べると、先っちょの人間たちが放射線を持って飛散していくらしい。
これからも恐怖が続くことを残して終わるところが怖かったな。

とても面白かったです。
長かったけど、長さを感じなかった。

1つ疑問に思ったのが、ゴジラの破壊シーンをあれだけ派手にやっていて、その後ゴジラの周りそこまで街が壊されていなかったのが、なんで?って思った。
もっと焼け野原になっているかと。
ちょい矛盾。

バケモノの子

両親が離婚し、引き取られた母が死んで、一人残された9歳の少年連。
親せきのところへ行くのが嫌で渋谷をさまよっていたら、バケモノたちの住む世界へ迷い込んでしまい…!!

【ネタバレ】

とてもよかった…!!
おおかみこどもの雨と雪」のような、ファンタジーの設定に置かれながらも、主人公は一人の人間としてリアルに悩み、動いている。
バケモノたちの住む異世界で、肉体的に強くなりつつ、8年がたつ。
8年異世界にいるっていうのもすごい。
連は、このまま異世界で暮らすのか人間界で暮らすのか悩む。
なぜかというと、8年ぶりに渋谷に戻り、離婚して何年もたっていない父親と再会したから…!!
楓という女子と知り合って勉強に興味が出て大学受験というみちも候補の一つに入ったから…!!

私は、この映画は完全に子ども向けだと思っていたので、異世界に迷い込んだ主人公が、異世界での問題を、異世界で解決して、それで終わる映画だと思っていた。
でもそうじゃない。
連の、「これからどう生きていくか」という人間としての悩みがとても丁寧に描かれていた。
だから、面白かった。 
 「おおかみこどもの雨と雪」みたいな。
雨も雪も、それぞれオオカミの血を与えられて生きて、生き方に悩み、さいご決断する。

この映画、それぞれのキャラクターの視点も良かったな。

連の親代わりになる熊徹というバケモノ、不器用だけど、連を愛している。
熊徹のライバル猪王山は、人間界で拾った人間の子ども一郎彦を自分なりに愛情をかけ育てる。
自分が人間だと知らずバケモノの世界で育った一郎彦は、自分は何者かと悩み、人知れず心の闇を抱える。

みんな自分なりに正しいと思いながら、それぞれ生きていた。
せつない。