映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

夜市

いずみが男友達に誘われて
奇妙なお祭りから出られなくなる「夜市」、
少年二人が興味本位で冒険した小道で
現実ではありえない人や出来事に遭遇する
「風の小道」…、2編が入ったホラー小説。

【ネタバレ】

あとがきでもあったが、「これがホラー小説?」
と思えるほど出だしからファンタジックだけど、
読み進めるうちに、
これがファンタジーなのかホラーなのか
どうでもよくなる。
それほど面白い…!!

「夜市」、薄暗い奇妙な描写もそうだけど、
異世界に迷い込む不安がもうね。
中盤から物語の展開に目が離せなくて
あっという間に読み終えた!!
すっごく面白かった…!!
だけど落ちが、
完全なるハッピーエンドではなくて、
いろいろ考えたな。
その後の続きを見たいというか、
最後はいずみ何考えてたんやろうとか。

「風の小道」はもっとブルーになった…。
序盤は、少年二人で歩いてて、
トラックが自分らが歩いている道を
通り抜けるところ、わくわくしたなぁ。
ファンタジー物語の序盤にある、そういう、
現実ではない違和感を感じられるシーンが
好き。
ここは何?これから何が起きるの?みたいな。
この二作は序盤から一貫して
不気味な雰囲気が漂っていたけど。
でもやはり、好きだそういうの。
後半は切ない…。
死人として小道を歩きたがっている友人の
お札と包帯をはがしてやる主人公の気持ちよ…。
あの頃になったら覚悟はできていたんやろうが、
それでも自分の手で友人をいかしてやる
っていうのが辛い…。
死を扱うのに都合いいことないよね。
コモリって、小森、なのかな、現実の世界では。
現実にあるどんな世の中のためになるものも
悪用されることは往々にしてあるわけで…。
異界の道も悪人が利用したら、
そういう風になるのか、と憤りを感じたわ。
ちゃんと制裁されてよかった…。
でも現実世界では、
死んだという事実はないから、
警察にリュックを届けた人は
疑われていないか心配。

あー、二編とも怖くて今もその世界に
どっぷりつかって不気味な気分だけど、
やはり面白かった。
ほかの作品も読んでみたい。
だけどやはり怖い。

【ネタバレ・再読】

 

まじで面白かった。

この作り込まれた世界観を、「夜市」は7~93ページ、「風の古道」は97~210ページでおさめられるの本当にすごい。

 

そもそも、これを再読したくなったのは、こないだ読んだ不気味系小説に影響されてそういうのを読みたくなったから。

で、パッと頭によぎった「夜市」はまえにすぐ読めたので手に取った。

再読してわかったけど、この小説は文章に難しい言葉が使われていない。

だからさくさく読める。

でも読んでてしっかり情景やキャラの切ない気持ちが伝わってくるので、すごい。

もうすごいしかいえん。

 

「夜市」も「風の古道」も異世界に翻弄される主人公と、主人公を助ける異世界の事情を知る救世主が現れる。

その救世主が語る自分の過去から、その世界のルールが見えてきて、読んでて、これこういうこと!?って理解するのが面白い。

そして2つの作品とも、主人公の想いや救世主の努力もむなしく、犠牲者がでてしまう…。

助けられなかった辛さもあるから後味は確かによくはない。

しかもただその人たちがからだ的に犠牲になっただけじゃなくて、心的な意味でも、あれは助けられなかったよねってなるからつらい。

だけど、主人公が解放されたというハッピーエンドもあって、読み終わったあとは感情がぐちゃぐちゃでいろいろと余韻がヤバイ。

 

とにかくまぁ、すごくてヤバイ作品でした。

アニメ化してほしいわ。

実写化はされたとしても怖くてみれない。