木皿泉
NHKのドラマのシナリオ本、すいか<1>の続き。
面と向かって相手に説教できる大学教授の夏子も、
大好きな住人を支えるために料理の研究をするゆかも、
自分の生き方に背くから大手出版社をけった絆も、
今の生き方から抜け出したくて3億円横領した馬場も、
自分らしく生きているように見えて、
それぞれみんな悩んで生きている。
唯一、基子はこれといった信念も行動力もなく
悩んでるから、主人公になったのかな、と思う。
そしてそんな基子と、主要メンバーの中では
一番人生経験のある夏子との会話が、すごく刺さる。
「私は、自分の20年先まで見えるんですよね。
あんまり、幸せそうじゃない自分が、見えるんです。」
「それは、今のあなたが考えてるだけの未来でしょう。
本当は、どんな20年後が待ってるかなんて、
誰もわからないんじゃない?」
「でも、大体のことは、想像できます。」
「じゃあ、あなた、自分がハピネス三茶に住むって、
思ってた?友達があんな事件起こすって、想像してた?」
「あ、いや、それは…。」
「基子さんは、ハピネス三茶に来て、楽しい?」
「え?
…そりゃ、実家にいる時よりは、百倍ぐらい楽しいです。」
「それは、どうして?」
「どうしてって…。」
「20年先でも、今でも、同じなんじゃないかしら。
自分で責任をとるような生き方しないと、
納得のいく人生なんて送れないのよ。」
書きおろしのラストも
全員幸せな温かい展開で終わるんじゃなく、
「すぐそこにある死」と向かいながらもそれぞれ幸せに生きる、
という終わり方で、「終わりというのは必ず来る」、
「変わらないものはない」といい続けてきた
この作品らしいな、と思った。