25歳のライターである男性作者は、編集長の何気ない一言で大阪府の西成区あいりん地区に78日間身を置くことになった。
仕事を探し始め、住み込みでS建設で土木仕事をしたり、南海ホテルの従業員になったりして、そこに住む人々の様子を知っていく…!
【ネタばれ】
すさまじい内容だった。
作者が若く、本場のホームレスとかかわるのが初めてだから余計、知識ゼロの私でもしっかり楽しめ…、たと言っていいのかな?
でも文章がわかりやすく、かつワードセンスもとてもいいので声出して笑うところも多々あり、本当に一気に読んでしまった。
私は一度グーグルマップで西成区を探検したことあったけど、別に普通の住宅街って感じだった。
だけどこの本に書かれていた西成区あいりん地区には、やくざの事務所がたくさんたっており、薬をやっているまたは経験者がうじゃうじゃ住んでいた…。
本当に日本?って感じのすさんだ街。
作者と一番距離が近かった宮崎さんという元やくざのおじさんが最後切なかったな。
宮崎さんはきつい土木仕事が苦ではないようで、日銭をまとめて稼いでは休みの日にギャンブルに全額ぶち込むといういかれた人生を送っているが、本人はそれなりに楽しく日々を生きるようだった。
しかし梅田で生活保護を受けないかと業者に声をかけられ、そのまま枚方市へ。
住むことになったのは枚方市の山奥にあるアパート。
作者は文庫本になったときのあとがきで宮崎さんの様子を書いている。
「S建設をやめ、大阪の枚方市で生活保護受給者となった宮崎さんに電話をしてみると、こんな泣き言を言っていた。
『毎日毎日、山奥の部屋で一日中テレビを見とるだけや。俺、もう気が狂いそうや。お前が書いた本を読むと、西成での生活を思い出すんや。あの時の俺はイキイキしとった。もう勘弁や。生活保護を辞退して石垣島でもう一回肉体労働やるつもりや。』
南海ホテルで置物のようになった生活保護たちの姿を思い出す。なにもない山奥で置物になってしまった宮崎さんを想像すると、胸が痛んだ。」
作者は結局そのあと宮崎さんと連絡が取れなくなったよう…。
人間って、ひとりぼっちになって社会性を失うとどんどん気持ちも沈んでくるしな…。
なんか西成区のあいりん地区って、最終ひとりぼっちになった人がここに集うのかなと思った。
家族も友達もいなくて、仕事もないから西成に来て、死ぬまで体がボロボロになるまで働く、みたいな。
土木現場も劣悪で、従業員が仕事中事故で死んでも会社の何かが改善されるわけでなく、それがなかったかのように、日々は回る…。
これ読んだ後、今私の周りにいてくれる人みんなに感謝したわ…。
この気持ち続けばいいけどな…。