脚本家であり小説家の木皿泉のセリフの数々はどのようにして生まれたのか…。
連載されたエッセイと、ラジオドラマデビュー作「け・へら・へら」の脚本を収録。
今回は、いろいろな文献の言葉を引っ張ってきて、夫婦で「人間」や「人生」を語ったりと、哲学っぽい内容だった。
トキコさんの、蝉の声を聴くために茂る葉っぱの中に頭だけ突っ込むのすごいな。
確かに違う時空にいけそう。
私は虫が嫌いなので、蝉の声を自ら聴きたいとも思わないけど、確かにあの鳴き声がなくなったら夏という感じはなくなってさみしいだろうな。
たぶん日本人のほとんどがそういう気持ちになると思う。
実際いたら気持ち悪いしうるさい以外の何物でもないんだけど。
「け・へら・へら」は、1988年のデビュー作。
作中の独身女性二人は結婚する気もないのに「花嫁募集ツアー」に応募し、参加する。
…なんかこの時代の女性は、「OL」をしてから「結婚」するというレールが引かれていたんだろうな、という時代背景がひしひし伝わってきた。
その中で、そのレールに乗りたくないし乗れない二人のやり取りがつづられる。
なので、ある意味この二人は現代向きな生き方してると思う。
主人公は幼いころから、既存のプリンセスストーリーとは違う物語のほうが面白いと感じている。
閉じ込められている女の子二人が王子様が助けに来るのを待っているのではなく、自分たちの力で逃げだす、という物語…。
ディズニー映画も昔はシンデレラのような王子様を待つプリンセスだったけど、近年はラプンツェルやアナ雪のように自ら行動するプリンセスを描いている。
この作品の世界観も古いシンデレラの世界観で、みんなシンデレラになっていくけど、2人はラプンツェルやアナ雪みたいな感じなんだろうな、って思った。
今ならこの2人の価値観、当たり前だし共感する人多いと思うけど、1988年の人たちはどう感じたんだろうな。