映画・小説の感想棚

映画、小説、アニメなどの感想。作品によって文章量はまちまち。土日正午を中心とした不定期更新。

アース

子どもたちのために食べ物を探す北極熊の母、食べ物や水を求めて乾いた土地を横断する像の群れ、熱帯の海で子どもを産み南極へ移動するザトウクジラ…。

英国BBCが莫大なおかねと5年の歳月をかけてさまざまな動物の生きざまを撮影した。

 

【ネタバレ】

 

壮大な映像と音楽と静かなナレーションで進む約100分のドキュメンタリーだった。

ナレーターいい声でききやすくて、渡辺謙さんでビックリした。

完全にプロのナレーターだと思ってた。

 

内容は、さまざまな動物のワンシーンを切り取った短編集って感じ。

弱肉強食の世界なだけあって悲しかったな。

特に、捕食していくシーン。

 

新しい草地を求めて群れで移動をするトナカイたち。

そこに腹をすかせた一匹の狼が忍び寄る…!

狼はまっすぐ群れに向かって走り、トナカイたちをパニックに陥れる。

この混乱のなかでおやからはぐれた1匹の子どもに狙いを定める狼。

子どもトナカイは必死に逃げる。

それをしつこく追う狼。

たまに、狼を振り切れる子どもトナカイもいるらしい。

早く逃げきって欲しいと強く願う私。

トナカイは精一杯走るが徐々に狼に距離を詰められ…、捕まってしまう…。

…実際に食べつくシーンはないけど、これからあの子どもが噛み殺されるのかと想像したらやるせない。

 

逆に狩りが失敗した動物もいた。

セイウチを襲う北極熊。

何日も海を泳ぎ、さ迷って疲れはてた北極熊がようやく見つけた獲物は、陸で群れているセイウチたち。

北極熊は子どもに狙いを定めて群れに突っ込むが、大人たちが子どもを囲い、子どもにたどり着かない。

囲っている大人セイウチを襲い頭を噛む。

が、弱った北極熊は力がでず、結局セイウチの群れたちは逃げていった。

…セイウチたちの気持ちになってみてたのでほっとしたが、獲物に逃げられた北極熊はそのまま餓死することになる…。

 

本当に厳しい世界だった。

文字通り食うか食われるかの世界。

動物たちの生き方見てたら、こいつらはなんで生きてるんだろって切なくなる。

この動物たちは生まれてきてよかったって思うことはあるのかな。

ずっと食べ物と敵と暑さと寒さに怯えてる…。

個人的には動物に感情はないと思ってるけど、子育てや敵から身を守るためにいろいろ工夫してて賢いし、なんだかなぁ…、って感じ。

“死なないように生きる”という本能だけで生きてるのかな。

 

私も肉を食べるので“動物”の一部だけど、実際に自分が食べる動物が殺される瞬間をみたことがない。

やっぱりそういう体験した方がいいんだろうな。

友達は昔、鴨を飼って育ててそれを食べる授業を受けてた。

私はとりあえず食べ物を残さないところからはじめたい。

いや、基本的に完食するんですが、こないだみんなでワンカルいったとき肉頼みまくって焦げまくったので、この映画みたあとだといろいろ思ってしまった…。

ONE PIECE FILM RED

滅ぼされた音楽の島「エレジア」から配信のみで活躍していた歌姫ウタがついに観客の前でライブを行うことに。

ライブを生で見ていた麦わらの一味だったが、ルフィはウタが子どものときに交流のあったシャンクスの娘であることに気づく…!

 

【ネタバレ】

 

映画を見た友達から、「Adoのライブやった」という事前情報があったので、Adoさんのライブのつもりで足を運んだら、想像以上にAdoのライブだった。

Adoさん好きだから楽しかった。

でも麦わらの一味好きでもあるので、事前情報あってほんまよかった。

 

話の内容も割りと分かりやすかった。

シャンクスに島を滅ぼされ見捨てられたと思っていたウタは自分の歌で世界平和を望む。

ただし、ウタの望む世界平和とは、自分のウタウタの実の能力で観客を幻の世界(ウタウタの世界)に閉じ込めてずっと幸せにしてあげるというもの。

ウタの歌をきいた人の体は本当の世界では眠ったまま。

ウタ本人が眠ればみんなはもとに戻れるが、ウタは、眠らなくならなくなるかつ大量に食べればそのまま死んでしまうキノコを大量に食べる。

私が死んだらみんなずっとウタウタの世界でいられるから幸せでしょ?というもの。

…怖い。

 

クレヨンしんちゃんなどこういうシリーズものの映画はどうしてもゲストキャラ中心に話が回る。

正直私はゲストキャラ中心の話は好きではない。

既存キャラが脇役に回るしゲストキャラに感情移入できないし感情移入できたと思ったらラストはお別れという落ちまで見えてるから。

しかも本編ではそのキャラはいないように話は進む。

せっかく感情移入して好きになったのに悲しいやん、みたいな。

でも、この映画は何度もいうように私のなかではAdoさんの歌をきく映画としてみたので、楽しめた。

ONE PIECE映画も何回もやってるし、こういう新しい感覚もいいね。

 

エンディング見たら、7曲歌ってた。

「新時代」に至ってはフルで歌ってたわ。

しかも、同じ曲を何回かきいたので、実際は10回くらい歌ってたと思う。

 

「ウタカタララバイ」「逆行」「Tot Musica」という曲の時かな。

バトルシーンやってめっちゃかっこよかった!

あのシーンもう一回みたいな!

曲も映像もかっこよかった。

しばらくリピートだわ。

 

ウタウタの世界から抜け出すために、麦わらの一味×ロー×海軍×ビッグ・マムの子どもたち、が協力しだしたところはちょっと興奮した。

過去の敵と協力する展開は好き。

オーブン兄さんがでんでん虫使ってるときだったかな。

ビッグ・マムも一瞬でてきたから、これはラストはビッグ・マム×シャンクス×ルフィ、というものすごいバトルが繰り広げられるのか!?と思いきや、ラストはAdoさんのものすごいきれいなアカペラで終わったわ。

まーさすがに映画でシャンクスとルフィの再会はないと思ったけど、うまいこと会わない展開で協力して戦っていた。

ウソップとヤソップの父子の共闘がじみに鳥肌たった。

ヤソップはシャンクスとウタの父娘のような関係をそばで見てて、息子のウソップのことはなにも考えてこなかったのか…?

ウタとウソップを重ねてたと信じたいわ。

 

エンディングの映像では本編での過去の脇キャラがでてきて嬉しかった!

 

ていうかAdoさん、配信ではブルックの持ち歌?「ビンクスの酒」を歌ってたから映画でいつ流れるのかと楽しみにしてたけど、流れなくて残念…。

ピアノを演奏するブルックの絵と共に、ウタとブルックのハモりききたかったわ…。

あと単純に「ウィーアー!」と「ウィーゴー!」歌って欲しい…!

 

営繕かるかや怪異譚

亡くなったおばが住んでいた古い町屋を受け継いだアラフォーの独身女性、祥子。

祥子は、桐ダンスでふさがれ中に入ることができない1室のふすまが、タンスの上から数センチ開いているのが見え、気になっている。

タンス越しに背伸びをして閉めるが、次の日も開いていて、を繰り返し、ついにふすまが開かれる瞬間を目の当たりにする…!

 

【ネタバレ】

 

ぞっとするけど、めちゃくちゃホラーというわけでもない。

 

小説を読み終えてタイトルの意味がなんとなく分かるけど、キチンとはわからないので調べてみた。

 

営繕→建築物を新築または修理すること。

かるかや→山野に自生するイネ科の多年生植物。屋根を葺く(かやや木の皮などで屋根を覆うこと)ために刈り取る草。

怪異→道理では説明がつかないほど不思議で異様なこと。

譚→話。物語。

 

この小説は6編の短編で成り立っている。

各話の主人公の家族構成や物語が始まる時点(怪異に遭う前)での心の持ちようなどが描写されているので、”日常からの不気味な出来事”感がすごい…。

妙にリアルで気持ち悪く感じる…。

 

6編とも舞台はとある城下町で、各話の後半はすべて「営繕かるかや」と書かれた名刺を渡す若い男性の尾端が怪異の原因である家に手を加え、解決している。

「営繕かるかや」は会社名なんだろうな。

解決といっても、尾端自身は営繕屋なので、お祓いは一切しない。

‟生きているものではない何か”を「逃がす」か「共存」かするために手を加えている…。

「共存」ってやばいけどな…。

主人公、尾端のその案でよくOK出したな、って思ったりもしたけど、害がなかったら別にいいのかな…?

私は嫌だけど…。

 

尾端という男が何者かはほとんど語られない。

主人公が悩んで、電話をかけた大工の知り合いだったり、友達の知り合いだったりする。

なので、みんな尾端が何者かよくわかっていないけど自分の悩みを解決できるならと尾端に任せてる感じ。

個人的に尾端という男は、子どもの時から‟生きているものではない何か”を敏感に察知していて、それらは怖いものではなくて悲しいものだと知っていたんじゃないかな、と思う。

でないと、「逃がす」や「共存」の発想には至らないよな…。

 

また、6話のうち、‟何か”が幽霊だと確定してるのが4話ある。

そのうちの3話の死因が確定している。

 

・何代か前の妾が病気になって主人公の町屋に引き取られたが誰にも面倒をみられないまま死んだ

・ボケ始めた爺さんが同居していた息子一家に年金を勝手に使われ虐待され、身体を壊して死んだ

・冬に母親がエンジンをかけたまま車を離れ車に乗ったままの子どもが排ガスにやられて死んだ

 

こう見ると、みんなかわいそうな死に方をしてるんよな…。

生きてる人間からすると幽霊は恐怖の対象でしかないが、少なくとも上の3人は、人間に助けを求めているのかなとも思える様子だった。

‟何か”の正体のほとんどがそういう人たちであることを、尾端は知ってるんだろう。

でもそう考えたら、かわいそうな死に方してなお死んだ場所にとらわれ苦しまないといけないの辛すぎやん…?

爺さんを虐待した息子一家が普通に成仏してたらマジで理不尽すぎるわ…。

 

なんかいろいろと悲しくてこわくて、ぞっとするお話でした。

 

 

 

進撃の巨人 OAD

リヴァイとエルヴィンの出会いを描いた「悔いなき選択」、
巨人に食べられたとある調査兵団の手記から次の成果に繋げようとする「イルゼの手紙」、
ジャンとサシャが料理対決をする「突然の来訪者」、
104期訓練兵団が訓練中盗賊団に仲間をさらわれる「困難」、
エレンが巨人に食べられたショックでミカサが回想する「lost in the cruel world」、
アニがエレン捕獲任務を行う前日を描いた「Wall Sina,Goodbye」。


どれも面白かった。

ジャンがメインの話は、OPがジャン仕様になってて笑った。
104期生からもアニメスタッフからもどんどんいじられていくの面白い。

壁の中の人類は、外の巨人に襲われさえしなかったら確かに安全だけど、身分制度で苦しめられてる人が実はたくさんいる。
リヴァイたちのような迫害を受けた一族たちは日の当たらない汚い地下街に住んでいた…。
地下街に住む人たちの過酷さをしれたのもよかった。
でもある意味地下街だったら地ならしの影響受けなくてすむのかな。
わからんけど。
リヴァイの暮らし見てたら、エレンは中流生まれなんだなと思った。

あとエレンたちが調査兵団にはいる前のエルヴィン、リヴァイ、ハンジの関係がよかった。
3人の印象としては、作戦や行動に一切感情を持たないエルヴィン団長、仲間がやられる前に迅速に巨人を殺すリヴァイ、多少の犠牲がでてもこれからの人類のために巨人を生け捕りにして調べたいハンジ、という感じ…。
リヴァイもハンジも自分の意見が正しいと思ってるからなかなか個性が強い…。
エルヴィン団長まとめるの大変そう…。
仲間優先のリヴァイはもちろん正しいし、ハンジの意見を採用してよかったこともあるから、難しいな。
いろんな人がいるという意味で、組織みを感じた。

そしてこの数年後ハンジがエルヴィンから次いで団長になるんだからすごい…。
ハンジは、エルヴィンほど冷徹になれないけど、人と人をつなぐのがうまい気がする。
引っ張るというより、なじんでいくというか。
本人も団長に求められるのは「理解することをあきらめない姿勢」と言ってたからそういうことを意識して団長を務めていたのかな…。
かっこいい…。

アニの話もよかったな。
コナン並みに事件解決するやんっておもった。
体術もさすが、かっこよすぎた。

エイプリールフールズ

主演:戸田恵梨香

 

対人障がいの若い女性、セックス依存症のイケメン医師、政治家老夫婦、万引き常習犯の小学生、その小学生を誘拐するやくざ、ネグレクト中年夫婦、いじめを受けて引きこもる男子中学生、占いで金を巻き上げる老婆…。

それぞれ悩みを抱えた人たちが、4/1,嘘をついて人をだまし自分をだまし、物語は展開していく…!

 

【ネタバレ】

 

面白かった!

群青劇です。

前半は登場人物たちのクソな部分がフォーカスされ、人間って汚いなと思ってしまう。

でも、クソな人間にはうっかり銃で殺されかけたりなどそれ相応の罰を受けるので、見ててそこまで嫌悪感はない。

さらにノリの軽いやつや単純馬鹿なやつが場面場面でいるので、重い話も笑えるのがすごくよかった。

 

全員訳ありなので、それぞれ最初の嘘がわかると、見てて「なるほどな」となり…、その嘘のせいで巻き込まれた人も嘘をついていたり、でも実は嘘じゃなかったり、でも本当だと思っていたのが実は嘘だったり…、と落ちが全然予想できず、かつ笑いも込みで進められるから飽きることがなかった。

 

ある漫画で、「加害者もケアが必要」的な言葉あったけど、この映画を見てその通りだと思った。

どのレベルの加害をしたかによると思うけど、被害者が許してくれるレベルの罪なら、きちんとその加害者の心を治してあげた方がいいと思う。

ココに出てくるモブ含めた登場人物は、こういう加害を受け入れ、同情できる心の持ち主ばかりだったので、見てるとだんだん、人間って優しなと思ってくるようになった。

菜々緒さんが演じたCAの女性が特にかっこよかった。

自分の命を脅かしてきた相手や、自分を遊んできたクソ野郎相手にも気持ち寄り添ってあげてた。

 

後半は、自分を鼓舞するための嘘、相手が傷つかないための嘘、で展開され、この映画に本当にクソな人間はいないんだとわかる。

また、こことここがつながっていたのか、という伏線回収が多いので、最初主人公が銃を持っていた理由など、序盤で謎に思っていた部分が後半で判明されてすっきりする。

 

さいごは、対人障がいの女性(戸田恵梨香さん)とセックス依存症のイケメン医師(松坂桃李さん)が生まれたての赤ちゃんを並んでみてて、こっちも、「あれ?この二人結婚してなかったっけ??これも嘘だっけ?」と現実世界すらもよくわからなくなってた。

 

テンポのいい、面白い映画でした。

 

それにしても、対人障がいの女性役の戸田恵梨香さん演技うまかったな。

CMなどで見る堂々とした「戸田恵梨香」はおらず本当にコミュ障のおどおどした女性にしか見えなかった…。

あと誘拐された万引き常習犯の女の子の、生意気で感情をあらわにしない複雑な感情がすごく伝わってきたので、きっと天才子役とか言われてたんだろうなと思って調べたら、「浜辺美波」だった…。

 

 

 

進撃の巨人 The Final Season 76~82話

ジークは野望を叶えるため、エレンとの接触に成功するが、エレンはジークの野望を叶える気はなかった。

エレンは自分の野望を叶えるためジークを利用したにすぎず、その野望を知った一同は、規模のでかさと残虐さに言葉を失う…!

 

 

今回も内容が盛りだくさんでしんどかった…。

でも見る。

続きが気になりすぎて見るの止まらん。

 

【ネタバレ】

 

感想。

結局「進撃の巨人」とは、巨人になれる素質を持つ‟エルディア人”(その中でも思想や派閥は分かれる)VSその素質を持たない‟マーレ人”を描いた戦争漫画なのかなと思う。

アニメ82話まで見た時点では。

 

物語序盤に描かれていた巨人VS人間の戦場になった壁の内も、今や人間VS人間の戦場になってるからな…。

 

エレンの兄ジーク(エレン、ジークともに‟エルディア人”)は、始祖の力で野望をかなえようとしていた。

その野望とは、「‟エルディア人”がいるから争いを生む。今後今いる全‟エルディア人”は生殖能力を失い子を産ませずゆっくり滅んでいく」こと。

が、闇落ちした主人公エレンの野望は違った。

エレンはジークの意見にのったふりをして全然違う野望を持ちながら始祖の力を使おうとしていた。

エレンの野望とは「パラディ島の“エルディア人”を守りたい。だから海より向こうに住む全人類を抹殺する」こと。

これにはジークも目を見開きドン引きである。

ジークの野望もヤバイんやけど…、ジークは誰も殺さないし今いる‟エルディア人”のみで完結する話。

だけどエレンは、壁の中の‟エルディア人”以外、つまり‟マーレ人”も‟東洋人”も壁の外の“エルディア人”もすべての人類の皆殺しを希望している。

規模がでかすぎるし人道的にあり得ない。

が、エレンはもともと壁の外の世界を知らない幼い時から仲間思いな性格で、仲間がやられたら、「やり返す!」という強い反骨精神を持っていた。

そして成長し、力も十分すぎるほどつけ、一人で行動できるまで世界のいろいろを知ってしまい、その反骨精神はただの独裁者と化しただけ。

幾千万の巨人を引き連れ今から人類を滅ぼしに行くエレンを見てると、「少年漫画の主人公とは…?」と困惑するが、渦中であるエレンの同期メンバーもどうしたらいいのかわからない様子。

ジャンは無理やり、「これでいい。」とエレンの思想に賛成する発言をし、自分に言い聞かせる。

頼みの綱はハンジやリヴァイがいないなか、みんなを引っ張っていける頭脳があるアルミンだけど、今の状況はどうしたらいいかわからないっぽい…。

難しい。

とにかくこのアニメ、ハッピーエンドには終わらないな。

 

エレンの行動も悲しいけど、ピクシス指令も悲しかった…。

ピクシス指令とは、壁の補強や警護を務める兵団の最高責任者。

容姿はスキンヘッドのおじいちゃん。

エレン達がまだ新米兵士のころ、エレンは初めてわけもわからず巨人化し周りの人間を驚かせ怖がらせる。

エレンのことを「巨人だ!」と兵たちは殺そうとするが、巨人エレンに通常の巨人たちが群がっていったのを見た同期のアルミンは、「彼は人間です!」と希望を持ち訴える。

が、新米兵士のいうことなんて誰も聞かない。

だけどアルミンの話を聞き、かつアルミンのこれからの作戦も聞き入れてくれたのがピクシス指令。

そんな優しくて柔軟性のあるピクシス司令は…、今回マーレ産の赤ワインを口にしてしまう。

その赤ワインにはジークの骨髄液が入っていた。

ジークの骨髄液を口にした“エルディア人”はジークの「叫び」で巨人化し、ジークの命令のもと動くことになる。

そしてジークは叫び、ピクシス司令を含む赤ワインを飲んだたくさんの“エルディア人”を巨人化した。

エレンの同期たちは巨人たちが仲間だとわかっていても自分の身を守るため倒さなければならない。

巨人の多さに苦戦しながらも、塔の上に巨人を集める作戦をたて、みんなで力をあわせて倒していく。

そこでアルミンが見つけたのがピクシス司令の巨人…。

アルミンは過去のピクシス司令を思い出しながらも、

 

「ここまで僕たちを導いてくれたのは あなたです ゆっくりと… お休みください」

 

と、迷うことなくピクシス司令の巨人を殺す…。

 

…つら。

ピクシス指令は基本的に保守的な考えなので敵が人間と知ってからはたしかに攻めた発想ができずエレンたちと同じ道を歩めなかった。

だけど、基本的に救える人類は今後の人材より人数を優先するという人の命を平等に考える優しい人。

そんな人が、かっこいい死に方や誰かの役に立つ死に方するより、情けない死に方してるほうが衝撃なんよ。

今回はワインを口にした後ワインの正体を知らされてるから自分の身にこれから何が起こるかわかるわけだし、巨人になりたてたころは若干人間の意識あるっぽい。

だからピクシス指令もワインの正体知ってからアルミンに殺されるまで、情けなさと申し訳なさと恐怖でいっぱいだったのかな、と想像するともうまたしんどい。

 

その他にも細かいところで人間関係が絡み合っててしんどかった。

逆に修復された人間関係もあったけど。

でもやっぱり巨人になってわけもわからず好き勝手使われたあと仲間に殺されるのはつらい。

本当に作者よくこんな人間がつらくなるエピソード考え付くなと思ってしまう…。

 

そしてもう主要キャラで、「仲間だから」と殺すのを躊躇する人はいないんだろうな。

躊躇している間に他の仲間が死ぬことを知ってるから。

殺される前に殺さないと。

…もちろん話し合う余地がある人は話し合いに持っていくやろうけど。

 

リヴァイとハンジも心配。

生きてはいるやろうけど、この二人好きなんで活躍してほしい…。

 

 

 

進撃の巨人 The Final Seasona 69~75話

エレンはパラディ島からマーレ国にわたった際、独断でマーレ国を襲撃(軍人だけではなく民間人も巻き込まれて多数死亡)したため、パラディ島に戻り牢に閉じ込められる。

が、脱走し、反兵団破壊工作組織「イェーガー派」とともに、ジークと合流しようとしている…!!

 

【ネタバレ】

 

一般的な「進撃の巨人」のあらすじは、

 

「壁の中で暮らすエレン少年は、ある日壁の外から現れた巨人たちによって、壁の中にいるたくさんの人たちが食われるのを目の当たりにする。だから、巨人を駆逐すべく調査兵団になり強い兵士を目指す。エレンは巨人を倒し、子どものころからの夢、壁の外に出て自由を手に入れる、ということができるのか?」

 

と、主人公目線の希望を持たせるものになると思う。

だけど、物語が進むにつれ、世界や歴史が明らかになり、それを踏まえたうえでのあらすじは違う。

 

「巨人になる素質を持つ‟エルディア人”はマーレ王国を滅ぼし、以降‟マーレ人”は‟エルディア人”を憎む。その後の大戦で弱体化した‟エルディア人”の一部はマーレ王国からパラディ島に避難し壁を打ち立て歴史や記憶を消して鎖国状態で約100年生きていく。‟エルディア人”と‟マーレ人”、双方に希望はあるのか?」

 

と、めちゃくちゃ複雑だしほぼ希望ゼロのあらすじになってしまう…。

いかにエレン少年は井の中の蛙だったか…!

駆逐しようとしていた巨人はみんな元人間で、自分たち壁の中の人間は誰でも巨人になる素質を持っているんだと…。

だからこそエレンはいろんなことを考え、いろんなことをしようとしている。

 

また、‟エルディア人”の中でも、壁の中で生きてきた者、マーレ王国に取り残された者で考え方もすごく違う。

派閥もわかれててややこしい…!

つらい。

 

そしても私はもうエレンの思想についていけない、というかわからない…。

主人公なのに…。

主人公が闇落ちする物語とかあまり知らないんだけど…。

 

この作品は大きい世界観の作り方もすごいけど、憎しみの描き方もすごすぎる…!!

 

‟マーレ王国に住むエルディア人”のガビという女の子は、一族から、「‟パラディ島(壁内がある島)のエルディア人”は悪魔」と教えられていた。

…もうややこしい。

で、ガビは‟パラディ島のエルディア人”を憎み、マーレ王国に忠誠を誓っていた。

 

ガビはマーレ王国に攻めてきた‟パラディ島のエルディア人”の女兵士サシャを殺し、捕まえられパラディ島に連れてこられるが脱走。

脱走先の田舎(パラディ島内)で心優しい金髪の女の子と知り合う。

ガビは金髪の女の子をも憎むが自分の正体がばれるのを恐れ敵意を抑える。

金髪の女の子は巨人に親を殺され孤児になったため、髭のおじさんに拾われ面倒を見てもらっていた。

髭のおじさんは何人かの孤児と住んでいて、ガビも自分の正体を明かさずその中の1人に入ることになった。

ある日、髭のおじさんたちはあるマーレ人のシェフにごちそうしてもらうことになり、ガビも行くことに。

髭のおじさんたちがいないところで、マーレ人シェフに助けを乞おうと自分がしてきたことを自信たっぷりに言うが、そのマーレ人にとってサシャは恋人だった。

マーレ人シェフは髭のおじさんたちの前でぼこぼこにしたガビを見せガビの正体を明かし、包丁で殺そうとする。

髭のおじさんはマーレ人シェフに包丁を自分に渡すよう言う。

髭のおじさんはサシャのお父さんだった。

しかし髭のおじさんは、「子どもたちのためにも憎しみを背負うのは大人の責任だ。」と言ってガビを殺さず包丁を妻にわたし、妻は包丁をテーブルに置く。

その場はいったん収まったかに見えたが、今度は金髪の女の子がガビに刃物を向ける。

お母さんが巨人に食われた直後、金髪の女の子を救ったのはサシャだった…。

 

つ、つらすぎる…。

サシャ…。

サシャは初期メンバーだったから、死んだときは私もすごくショックだったけど、こんなに周りに影響を与えていたとは…。

人一人死ぬだけでこんなに人の思想や感情も変わってくる…。

これがめちゃくちゃ大きい規模が戦争…!

髭のおじさんが言うように、憎しみを引っぱらずにどこかの世代で我慢しなければ、一生平和はないように思う。

たぶんみんな分かってるんだけど、大切な人が殺された当人になると無理なのかな。

 

リヴァイとジークの対話もやばかった…。

リヴァイの仲間が2人と離れたところで周りを見張りつつ、対話している。

ジークが途中リヴァイに、「お前モテないだろ」とディスってるシーンで、「…モテたことくらい、ある。」とややすねだったのが笑った。

こんな生きるか死ぬかの重たい世界の中でも、モテというプライドや欲がリヴァイの中にもあるのかと思ったらちょっと平和な部分が垣間見られてほほえましかったから。

が、そのあとがしんどい…!!

ジークによって見張りの仲間全員が巨人化し、操られ、リヴァイを襲う。

リヴァイはまだ人間の面影が残る巨人たちをやむなく殺していく。

リヴァイの下した決断と対応は非情なんだけど、そうせざるを得なかったリヴァイのことを思うとしんどい…。

 

しんどいけど、続きを見るクリックの手が止まらない。

 

サマーバケーションEP

古川日出男

人の顔を覚えられない病気の
主人公♂は、井の頭公園
ウナさん・カネコさんと
出会い神田川に沿って
海を目指す…!!

文章は読みにくいけど、
めっちゃ散歩に行きたくなる!!
夏に読んでよかった。
歩きながら仲間が増えたり
減ったりするんやけど、
こういう不思議な出会いって
いいよなー。

妙に印象に残る小説。

 
【再読・ネタバレ】
 
めっちゃ好き。
夏に読みたくなる小説!
物語は、視力はあるけど人の顔の見分けがつかず集団行動が苦手な二十歳の「僕」がホームから外出許可もらったので、井の頭公園に一人で遊びにきていたところから始まる。
ホームということは、おそらく施設。
普通の学校もいってたんだろうなと思わせる部分はあったけど病気?だから学校にいけなくなっておそらくそのあとは養護学校?施設?
とにかくなんか親もいないのかな。
登場人物について詳しくふれてないからわからんけど。
 
そんな「僕」は井の頭公園でウナさんとカネコさんと出会い、川の源流から海(東京湾)を目指すことになる。
以下、登場人物の動き。
ラストまでネタバレ。
 
◼️お昼11時。
・「僕」、ウナさん、カネコさん、井の頭公園を出発
・へその人、イギリス人さん、と出会い一緒に歩く
・小学生3人、と出会い一緒に歩く
・おじさん、と出会い一緒に歩く
・おじさん、が離脱
ミスドでお茶休憩
・おじさん、広東さんと北京さんをつれ合流、一緒に歩く
・小学生3人、離脱
◼️夕方5時
・遊歩道で夕飯
・自転車8人組、と出会い自転車にのせてもらって移動
◼️夜8時
・自転車8人組、とわかれる
・ドームシティで温泉、睡眠
◼️朝5時半
・イギリス人さん、へその人、離脱
・起床、温泉、朝食
◼️朝7時、出発
・おじさん、広東さん、北京さん、離脱
・「僕」、ウナさん、カネコさん、東京湾に到着
 
移動というのは本来物語の中では省かれがち。
でもこの物語は「僕」目線で温度、音、食べたもの、などめちゃくちゃ丁寧に移動を描写しているから面白い。
季節感や空気感などがすごく伝わってくる。
私も一緒に歩いてるみたい。
実際人物が歩いている場所ごとに私も写真を検索して物語をすすめた。
だんだん川幅が広くなっていくことに感動。
実際歩いてる人たちはもっと感動するんだろうな。
登場人物が離脱するときがとても切ない。
いい人だけど変な人ばっかりやったしな。
でもみんなベタベタとした人間関係じゃないから、さらっとわかれてる。
そこがまたこの世界観とマッチしていた。
 
この物語のラストの文章、そこだけちょっと怖かった。
 
(「じゃん、けん」と3人で言いました。声を揃えて。そして、次の瞬間の声が、僕の記憶の内側で止まります。一時停止して、ずっと、ずっと。ずっと、きっと。消えないで、ここにいます。)
 
普通記憶って残るものじゃないの?
残ったままその人の人生は進むんじゃないの?
なんで一時停止してここにいるの?
この書き方まるで「僕」の人生がここで終わってるみたい…。
深読みしすぎ?
どんなに時は過ぎてもいつでもこの場所に戻ってこれるよって意味?
「僕」には幸せになってほしいから後者ということにしとこう。

リメンバー・ミー

ミュージシャンを夢見る少年ミゲルだが、すでに亡くなっているひいひいおじいちゃんが音楽のために家族を捨てたのでミゲルの家系では音楽は一切禁止。

音楽をあきらめきれないミゲルは家族に内緒で音楽のコンテストに参加したくて、あこがれのミュージシャンのデラクルスのお墓からギターを盗むが…!!

 

【ネタバレ】

 

ラストまでネタバレです。

長いです。

 

はーーーーーーー。

泣いたー…!!

音楽・家族・死後の世界、とこんなバラバラな要素をもってしてもピクサーならたった2時間で泣かせにきよる。

ほんまピクサー映画に外れない…。

 

序盤は、音楽をやりたいミゲルを一族総出で否定してくるという子どもにとっては地獄のような始まり方。

でもしっかりきちんとすべて解決するもんな…。

 

ミゲルが死後の世界に入り、観てて途中でミゲルと、死後の世界で知り合ったガイコツのヘクターとの関係性がわかってしまったけど、それでも2人が関係性をわかりあったシーンは感動した…!!

一族から疎外感を感じてきたミゲルと誰からも忘れられたヘクター、辛かった2人が心から喜びあっているのが伝わってきたから。

音楽を認めてくれる人が…、自分の存在を認めてくれる人が…、自分の家族にいたなんて。

 

ミ「ヘクターの曲なのにデラクルスの曲だとみんな(世間)思ってる!!」

ヘ「みんなのために書いた曲じゃない。ココのために書いた。」

 

視野的なことでいうと、「ミュージシャンになる夢」(大)と「家族」(小)。

大と小、相反するこのテーマで、小を大事に扱ってる。

ヘクターのこのセリフがすごい家族みが出てて好き。

そして「リメンバー・ミー」は何度も聞いたことあった曲だったけど、娘のために作ったというエピソードを知って聞くと感動増す。

 

そしてラスト。

死後の世界にいるヘクターは現世で誰にも思い出せてもらえないため消えかける。

死後の世界で消えるのは第二の死と呼ばれ、消えた後どこに行くのかはわからないらしい。

唯一現世で自分の存在を知ってくれているのはヘクターの娘であるココ、つまりミゲルのひいおばあちゃん。

現世に戻ったミゲルは急いでココのもとに行き、ヘクターのことを思い出すように語り掛ける。

しかしココは重めの認知症

車いすに座ったまま何の反応もしない。

音楽を禁止している家族が、ミゲルを追って二人の部屋に入ってくる。

ミゲルは、デラクレスのお墓から盗んできていたギターで、「リメンバー・ミー」を歌いだす。

怒ろうとするおばあちゃんだが父が止める。

唇を開き一緒に歌いだすココ。

歌い終わり、ココは歌で昔の記憶を取り戻したのか、ミゲルにヘクターの写真を引き出しから差し出す。

 

「パパはミュージシャンだったの…。小さかったころ、パパとママはいつも素敵な歌を歌ってくれた…。」

 

ミゲルはココを抱きしめる。

一族から疎まれてたヘクターだったけど、娘のココはしっかりお父さんのことを覚えていたし大好きだった。

…泣いた。

 

言葉の伏線もさりげなく貼られ、回収されていた。

序盤で、おばあちゃんは、

 

「あの男(ひいひいじいちゃん)の音楽は呪いだ!!」

 

とミゲルに言う。

‟呪い”っていうのは、「人や霊が悪意を持って災厄や不幸をもたらす」だけど、ひいひいじいちゃんの音楽は幸せをもたらしてくれた。

ココは一瞬だったかもしれないけど記憶が戻り、ばらばらだった家族も分かり合えた。

…ていうかこれは伏線とは言わないか。

後からこのシーン見た時、あって思ったけど、違うか…。

一族に大きな影響を与えたって意味でこの言葉に意味を感じてしまった。

 

あとデラクルスの有名な言葉。

 

「チャンスをつかめ」

 

この言葉に、夢をあきらめられないミゲルはいつも元気をもらっていたけど真意は違った。

 

「たとえどんなことであろうと、やる覚悟がないとな。チャンスをつかむためには。」

 

実際は、人を殺してでも成功のチャンスをつかむという意味だった…。

完全に悪役。

 

もういろいろ本当にピクサー映画すごいわ。

 

 

ひとなつの。

大島真寿美瀧羽麻子藤谷治森見登美彦、椰月美智子が描くひと夏の短編物語。

【ネタバレ】

おもしろかった。
三泊四日のサマーツアー」と「真夏の動物園」が好き。

三泊四日のサマーツアー」。
中二の男子は母親が恋人と会いたいがため無理矢理一人で参加させられたサマーツアーに不満を抱いていた。
でも行った先の沖縄のある島ではなんとなく不思議なことが起こり…、という話。

別に大きく話が動くわけでも、その不思議が解明されるわけでも、なかった。
けど主人公目線で語られる、主人公が見聞きしてる以外にも、その島や吉村さんについて本当は何かもっと隠してることがあるんだろうなと思わせるのがこの物語の不気味なところ。
友達との関係性もよかった。
ラストは、中二のわりにあっさりした友達付き合いするんだな、とちょっと寂しかった。

「真夏の動物園」はいろいろ共感。
女子中学校の美術教師をしている30半ばの男は修学旅行で京都に行くことに。
修学旅行といっても教師の自由時間が多く1人で行動していると、同じく1人で行動していたおかっぱの生徒と出くわし…、という話。

最初なんでこの男は物事を冷めた目でみて全体的にやる気がないんだと思っていたけど、過去が語られてなっとく。
男は充実した京都の美大卒業後、いろんな仕事を転々としてきていた。
過重労働、人間関係…、男は鬱寸前まで追い込まれ地元に帰り、親のコネでなんとか美術の非常勤講師になれたのだとか。
そこから男を応援する気持ちになった。
世間や自分に対するあきらめた感覚が私もとてもわかるから、男には今より幸せになってほしいし、考え方も変わってほしいと思うようになった。

一緒に行動している、女子生徒も冷めた感覚の持ち主。
キャラ的に男と似てるけど、男は人生経験がある上での冷めかた。
女子生徒はただ漠然と自分の可能性を信じてるからこその周りを見下した冷めかた。

ラストは予想してたけど劇的になにかが変わるとかではなかった。
でも男も女子生徒も楽しそうでよかった。
男がそのあとどうなったのかとても気になる。

「ささくれ紀行」も「真夏の動物園」とちょっとにてたかな。
二十歳の主人公は、偏差値33で早稲田大学受けて落ちて二浪して精神的に追い詰められたから青春18切符片手に行き先決めず旅にでる、とかパンチききすぎて続き楽しみだったけど、わりと普通だった。
確かに二十歳のわりにアホっぽい行動多かったけど、偏差値33で早稲田受験する以上の面白行動はみられなかったのが残念。

ただ、自分のこと情けなく思ったり、行動にでてみたけどその行動に意味を見いだせなかったりする感覚はとてもわかるな。
だからこの主人公にも幸せになってほしいけど、結局どうなったかわからない。
サラリーマンにはなったっぽいので、一応普通の生活はしてるのかな。
そのあとも描いてほしかった。